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vol. once more 12 ページ34

｢ヌナ。久しぶり。｣

たぷに一方的な別れを告げた後

会わないように避けてたから、なんとなく気まずくて

駆け寄って来るジヨンに軽く手を振って立ち去ろうとしたあたしの腕が掴まれる

｢ヌナさ｣

ジヨンが言いにくそうに、下唇を噛み締めた

｢たっぴょんと別れた？｣

｢……。｣

｢それは好きじゃなくなったから？｣

掴まれた腕が痛い

だけど……心はもっと痛くって

“まだ好き”って声に出したら泣いてしまいそうで

うん。もううん。どちらも言えないから

｢好きなだけじゃだめなの？｣

あたしはただ俯くしか出来ない

愛ってね与えられなくても、与えすぎても枯れちゃうんだ……

好きだけど

好きだから

あたしはどんどん欲張りになっていく

息が出来ない恋は

大好きな人も

自分自身ですら、追い込んでいく

そっか。って、困ったように笑うジヨンが

それから一呼吸置いてから、真顔になって

｢人を好きになるって…難しいね。｣

ぽつりと呟いた

忘れるって、どういうことなんだろ

たぷから離れても

たぷの顔がチラつく度に頭を振っても

全然消えてくれなくて

仕事を終え帰る道の途中や

自分以外帰ることのない

たぷの面影がなくなった部屋のドアを開けた時の絶望感

どうしよう

何てことをしてしまったんだろう

大好きな人を手離した

取り返しのつかない現実がわかった時

あたしはやっぱり、涙を流すことしかできない

濃密な夜を思い出せば

泣きたくなるほど切なくて

たぷの笑顔が瞼の裏に浮かんで

あたしだけが

どうしようもなく……あの頃を恋しがる

………ピンポーン

間の空いたインターホンで目が覚めた

ズキズキ頭が痛むのはたぷの夢を見たせい

もう…今日はせっかくの休みなのに

ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン

しつこく鳴らし続けられるインターホン

寝た振り決め込もうと、頭から布団に潜り込むけど

……ちょっと、誰よ？！

はぁーっと重たいため息に合わせ重たい身体を起き上がせて

カーディガンを羽織ってぺたぺたと玄関に向かった

｢はい？｣

ドアを開けると冷たい風が部屋に吹き込んで

ドアノブを握る手がするりと抜け落ちた

……なにこれ

あたし……寝ぼけてるの？

真っ直ぐあたしに向かって見下ろされる視線

｢おい。確認してから開けろって。｣

あの頃と変わらないお決まりの文句が

ゆっくりとあたしの耳に入ってきた