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vol. once more 7 ページ29

｢ちょっと、たぷ！｣

風呂上がりにAが俺を呼ぶ声が少し怒ってた

ソファに寝そべりながらキッチンへ視線を向けると身体半分冷蔵庫に突っ込んで

｢もう！あたしのプリン食べたでしょ？！｣

｢食った。｣

｢ばかばか！楽しみにしてたのに！｣

相変わらずプリンのひとつやふたつで忙しい奴

騒々しいなと見上げたら

どんどん足音を鳴らしながら俺の目の前に仁王立ちして

むすっと俺を睨みつけるAの顔を両手でむぎゅっと挟んでやると

Aも同じように、俺の顔を包んだ

子どもっぽいくせに変に年上ぶりたがって

単純なようで、掴みどころのない女

濡れた髪から、シャンプーのいい香りが立ち込める

抱きしめて、キスしてやるつもりだったのに

｢ねー、たぷ。｣

｢ん？｣

｢……たぷの誕生日。何がしたい？｣

にこーっとじゃれるように笑って、伸びるAの視線

あぁ、もうそんな時期かって

それぐらいにしか思わなくて

｢別に、普段通りでいい。｣

そう言うと、Aの目が一瞬怯んで

｢……でも、せめてケーキとか。｣

｢どうせ事務所の誰かが用意するだろ。｣

俺はこの後、Aとどうするかってことが頭を埋めていて

髪を撫でても、頬を撫でても無反応

｢……そっか。そーだよね。｣

うん。って小さく頷いて

｢髪……乾かしてくる。｣

あははって違和感の残る笑顔だけを置いた、Aの後ろ姿を眺めた

｢たーぴょん！昨日はどうだった？｣

がしっと肩を組んできたジヨンのからかうような口調

｢昨日？｣

｢ヌナと。どうだった？｣

｢……別に何も？｣

首を傾けるジヨンに蚊帳の外に追いやられた気分

何がだよ？なんて睨んだら、逆に睨み返されて

案の定、俺の誕生日はメンバーやスタッフ

たくさんの人がお祝いしてくれて

その中にもちろんAもいた

いつものように笑うA

帰ってからも宣言していた通りに、特別なことは何もしていない

｢お前が喜ぶようなことはなんもねぇよ。｣

｢まじで？ヌナのケーキは？｣

｢ケーキ？ここで食っただろ？｣

｢……ヌナさ。たっぴょんにケーキ作るってずっと前から張り切ってたよ。｣

ジヨンのわかりやすいため息が耳を突き抜ける

なんで早く言わねんだよ、なんて勝手にジヨンのせいにしても

知ったとこで、どうにもならないし

俺は変わらない