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vol. once more 4 ページ26

前触れなしに、部屋に鳴り響くインターホン

またかって立ち上がって向かった玄関

｢相手を確認してから開ける癖付けろ。｣

不機嫌なたぷにぱしっと頭を叩かれた

｢だってたぷしか来ないもん。｣

｢腹減った。なんか食わして。｣

お邪魔しますも言わないで我が物顔でずかずかと上がり込んで、テレビの前を陣取る

｢残り物しかないよ。｣

仕方なくキッチンから呼びかけると緑のキャップが縦に揺れた

あの日をきっかけにたぷとの仲が急速に近づいた…というより

懐かれてる？

あの悩みはなんだったんだろって、ばかばかしくなるぐらい

そりゃもう、みんなが呆れるほどにべったりと

いつの間にかあたしはたぷの世話係

温め直した夕食をたぷに渡して自分用に持ってきたプリンの蓋をぺりっと剥がすと

口をもぐもぐさせながら、ちらっとあたしを見た

｢たぷさー。いつも何しに来るわけ？｣

｢それも食いたい。｣

ちょっと大きめに口あーんって開けて待ってるおっきなわんこにどきっとする

｢A。ビール飲みたい。宿舎じゃ飲めないから。｣

｢ヌナでしょ。｣

｢やだ。｣

もう！

やだとか、可愛いな

みんなの前じゃヌナって言うくせに

ふたりになれば、途端に呼び捨て

しっかりしてるのに、甘えん坊

たぷは一番年上だからメンバーには見せたくない悩みがあって

あたしには見せれるの？

だったら思う存分甘やかしてあげたらいいのかな？

｢なんかあったら、ヌナに言いなよ？話ぐらいしか聞けないけど。｣

たぷのキャップの跡が付いた髪を撫でると前髪がぴょんと跳ねて

また、それが可愛くて

堪えきれなくてふふっと笑ったら

たぷの右手があたしの手首をがしっと掴んだ

｢たぷ？｣

｢ちょっと早く産まれたからって年上ぶんな。｣

少し怒った表情で

触れられてる部分が熱を帯びて

ドキドキが加速して、息苦しい

｢狙ってたんだよ。虎視眈々と。俺はヌナの弟になる気は端からない。｣

そんな目で見つめられるなんて思いもしなかった

苦しそうにあたしを映し出すその瞳に吸い込まれそう

ずるい……狡過ぎる

｢何しに来たって？そんなの夜這いに決まってる。｣

髪を梳かした指先が耳たぶに触れる

間近で聞こえるその低くて掠れた声

柔らかい感触を唇で感じて

優しい香りが意識を独占した

狡いのは…あたしの方

だってキスする前に、あたしはもう目を閉じていた

だってずっとこうなることを望んでたんだもん