思い出は再び頬を染める ページ9
それより上役からの使いで湯屋と町の境目辺りにある物置小屋の閂を閉めにいかなければならないのだ。いつもの担当の人が急用で行けなくなったらしい。
いつもはお客様でごった返す橋に、今日は珍しく人影が少なかった。
赤い欄干に囲まれた木板の上を走ってゆく。
薄い紫のグラデーションの夕焼け空にほのかに白い上弦の月が浮かんでいた。
この世界って滅茶苦茶理不尽だけど、どこか静けさを持っていて凄く綺麗だと思う。でも、その分どこか――儚い。
もしかしたら、私とハクの関係だって……
恐ろしくてそれ以上を考えるのをやめた。
十数分後、言われた通り小屋に閂を掛けて私は湯屋への帰路についていた。
物置の扉のささくれで頬に擦り傷を作ってしまった。
さっきまで広がっていた夕焼け空は一瞬にして薄闇色に変わっていた。湯屋が妖しく浮かび上がる。相変わらず人っ気の無い橋に足を踏み入れようとした時、背後からぎゅっと誰かに抱き締められた。
「っきゃ……」
驚いて叫ぼうとすると、大きな掌で口を塞がれた。誘拐!? とドキドキしていると耳元で聞きなれた声がした。
「叫ぶな! 私だ」
「……!」
安心して肩の力をゆるめると、ようやく口を塞いでいた手が離れていった。私は彼の腕の中からするりと抜けだしてハクに向かい合った。薄い闇の向こうに白く大好きな人の顔が浮かび上がる。
「もう何よ、びっくりしたんだから!」
「すまない。……叫ばれそうになって、まるで不審者にでもなったようだった」
少しふて腐れて話すハクが可愛くて少し笑ってしまった。と、彼が何かに気づき私の頬へ指を伸ばしてきた。
「おや、擦り傷を作ったか?」
細長い指の腹が触れたのは先程すれ違った湯女の爪が引っ掻いた場所。
こんな小さな擦り傷薄闇の中で何故分かったんだろうと驚く。
「暗いのにどうして分かるの?」
「神を見くびるなよ。どんなに暗い闇でも神の力を使えば何でも見え……」
泰然として語っていたハクが突然「しまった」という顔をした。その続きを語ろうとして口をつぐむ。
いきなりどうしたんだろう?
疑問に思い首を傾げた時、ハクと初めて身体を重ねた夜のことが頭に浮かんだ。
『ハク、電気全部消したよね……?』
『もちろんだ。もう私からAの身体は見えないから安心しな』
まさか、この竜の神様は。
安心しな、とか言っておいて。
「……あの夜も力使ったの?」
裸を見られた、と気付き頬が赤くなる。
振り返りハクを睨み付けた。
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (
レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください！m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか？お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます！笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´；ω；｀)← もしかしてモデルにしてますか！？ (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2014年12月28日 22時
