生まれた渦 ページ48
「……ねぇ、(人1)ちゃん」
「なに?」
「僕のお嫁さんにならない?」
「……はぁ?」
開いた口が塞がらないとはこの事だ。私は言葉に困り、何を言うべきか思い巡らせてみたが適当な台詞は何も浮かんでこなかった。
私は引き攣った笑顔を浮かべて白澤様を見た。
「頭打ちました?」
「失礼だなぁ」
「ムリムリ、私白澤様の子供産めない」
「案ずるより産むがやすし」
「んな訳ないだろうっ」
私は立ち上がって思いきり白澤様の頭をはたいた。艶のある、さらさらの黒髪に手が触れる。彼がやめてよとおどけて笑うと、古びた金貨の耳飾りが左右に揺れた。
普段と変わらない様子を見て、やっぱり冗談だったんだと安心した。
*
「……ハク!」
背中に抱き着いてくる感触があった。Aは奥ゆかしくて中々自分から抱き着いてきてくれたりはしない。でも、と思わず期待の芽が芽吹くのを感じながら背後を振り返った。
そこに立っていたのは大きな瞳をらんらんと輝かせた千尋だった。自分の中の何かが冷めてゆくのを感じながら、さり気なく身体を離すと、千尋は心なしか寂しそうな顔をした。申し訳ないとは思うが、致し方あるまい。自分の愛すべき相手は彼女ではないのだから。
「千尋も湯婆婆に呼ばれたの?」
「そうよ。大切な話があるってね。まぁ、坊に会えるから来たようなものだけど」
「坊は千尋に会ってから良い子になったなぁ」
「ふふ、カオナシもね」
「……あいつはそうでもない」
Aとカオナシが口付けしていた場面を思い出し、ハクの表情は苦々し気なものになった。苛々した気持ちを振り払うかのように、彼は廊下を歩き出し湯婆婆の書斎を目指した。千尋も明るい茶の髪を揺らしながら彼の後を追う。
2人は、何故湯婆婆に呼ばれたのかということをさして重大に捉えていなかった。
だが、思慮深いハクでさえ、湯婆婆とその周辺に渦巻く権力と金が絡まった目論見には気が付けなかったのだ。
……気高い竜をも巻き込む大きな渦に。
*
「……今日こそは、返す!」
そう決めて廊下に出たものの。やはり会うのが怖くて何度も立ち止まってしまう。まだハクの部屋のある階へすら辿り着けていない。
洗濯したての白い羽織を胸に抱き締めた。エレベーターが込み合っているのは、ハクに会いに行く決意を遅らせる良い言い訳になる。
沢山の従業員のエレベーター待ちの最後尾に加わった。
今日も湯屋は大繁盛で、廊下は人混みですれ違うのも辛い程だった。現世の満員電車のようだ。
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (
レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください！m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか？お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます！笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´；ω；｀)← もしかしてモデルにしてますか！？ (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2014年12月28日 22時
