修羅場 ページ29
「私･･･っハクのこと信じてたよ。やっと、千尋じゃない私のことを好きになってくれたって」
「もちろんだ。私にはそなたしかいない」
ハクは優しく微笑んで私へと歩を進めた。私の大好きな微笑だ。何だか彼が近づいてくるのが怖くて、じりじりと後ろに後退りした。
「心配しなくて良い。･･････もう、泣かないで」
彼の手が猫の尾のようにするりと左手首に絡みついた。びくりと身体を震わせたが、持ち前の機敏さで動きを封じられてしまう。綺麗な指先が頬へと伸びてきた。
「A･･････愛してる」
指先が触れて、目尻の涙の粒を拭い去って行った。間近に翡翠の瞳がチカリと光る。
その瞬間、私は彼の手を振り払って一気に距離を取った。
「信じる訳あるかぁっ! もうハクの部屋行ってあげない!」
「だから、理由があると」
「そうだよ。口付けを先にしたの、ハク様じゃなくて千からだし」
それまで黙っていた野次馬の1人がぼそりと口を挟んだ。床に具合が悪そうに寝そべっていた千尋も頷いている。
――そんなの、知らないもん
涙の流れる勢いが加速した。駄々っ子のようにわがままを叫びたい。
「分かったわよ。私は千尋と結ばれるまでのキープだったんだね」
「キープ･･････!? 断じてそんなことはっ」
「どうせあるんでしょ!?」
「だから私を信じろと言っているだろうっ!」
ついにハクが苛ついたように声を荒げた。形の良い眉をこれまでにない程寄せていて、誰が見ても怒っていると分かる。ふと激しい恐怖を感じて、私はハクから目を逸らした。
その隙を見て再び彼は私に近付いた。
「千尋は千尋、AはA。私にとってはそなたが全てだ」
「嘘だぁっ･･････」
「嘘じゃない! 私の目を見ろ!」
乱暴に頬を掴まれ、無理矢理に前を向かせられた。すぐ目の前でこれまでにない程怒り顔のハクが私を見ていた。深緑の瞳に身体を射抜かれるようで胸がちくりちくりと痛む。
不意に強く抱き締められた。息が出来ない程強く。黒い髪が首筋に触れてくすぐったい。
「決して私からやろうとした訳じゃない。あんなことをしたいと思うのはAだけだ」
「･･････ッ」
「これ以上そなたを泣かせたくない」
――これ程、ハクは優しいことを言ってくれているのに。
それなのに、尚も駄々をこねたいと思ってしまうのは何故だろう。
彼の愛に自信がないから?
それとも、まだハクのことを信じ切れていないから?
･･････自己嫌悪に、燃える。
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美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (
レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください！m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか？お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます！笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´；ω；｀)← もしかしてモデルにしてますか！？ (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2014年12月28日 22時
