うち痛み30%,そして○○70% ページ16
男の人らしく節くれだった大きな手。筋肉は少ないけど細くて身長のある身体。そんな大人の男の人に力いっぱい引っ張られたら、私なんかの力では彼を引き留めることさえできない。
「美影さん、止まって!」
「やだね」
「お願い」
そう言っても彼は聞き入れてくれなくて、まだ人気のない夕焼け色に染まった町をずんずん歩いて行った。地面に立つ足に力を込めてみても、無理矢理引きずられる。
なんか無性に腹が立った。
「待たんかい!」
片足に精一杯の力を込め、美影さんの細い腰元を狙って思いきり蹴りつけた。足先に鈍い感触を感じる。彼は倒れこそしないものの、少しよろめいて立ち止まった。
やった、と達成感に満たされる。その時私の身体が大きく揺れた。彼と手を繋いでいて、しかも片足だけで立ってる状況だからバランスを崩すのも当然といえば当然か。
「あっ」
「A!?」
「あーっ」
ドテッ、と情けない音を立て地面に膝から倒れ込んだ。咄嗟に掌で庇ったが、一瞬遅れて膝小僧にじんじんとした痛みがやってくる。見てみれば、掌も思いきり擦りむけている。見てみれば、じわりと滲みだした赤い血の上に砂がこびり付いている。もちろん両膝も同様だ。
暑いからと短めの丈の制服を着ていたことも祟ったのかもしれない。
「いひゃい……」
久し振りにやってしまった。
涙ぐむと、呆れた顔をした美影さんが、ぺたんと地面に座り込んだ私の前に屈んだ。患部をじっと覗き込まれる。
「あー、派手にやっちゃったねぇ、これは」
「美影さんのばかっ」
「は」
「ばーかばーか」
「いや、なんで」
「私だって分かんないけどばかっ」
「……」
地味に辛い鈍痛故にやけくそになって言うと、彼ははぁ、と溜息を吐いた。
あれ、もしかして本当に呆れられた? ちょっと引かれるようなこと言っちゃったかもしれない。やばい……
内心焦っていると、彼はもう一度溜息を吐いてから着物の裾をまくりあげた。
「痛いかもしれないけど、少し我慢してよ」
「え?……ぎゃあっ」
夏の夢のような夕方の町に響く、私の可愛くない叫び声。彼が私の右膝の汚れを掌でさっ、と払いのけたのだ。とんでもない激痛が襲う。
「ちょ、やめてくださいよ……ひゃあっ」
次は僅かな鈍い痛みと70%の驚きによる叫び声が響いた。美影さんが、いきなり汚れを払った私の膝をちゅぷ、と音を立てて唇で吸い上げたのだ。しかも、キスみたいに一瞬じゃなくて口内に含んで。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1081人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美音 - なんだろう…美影さんを内山昂輝さんの声で再生してしまうの… (2022年1月10日 7時) (
レス) @page33 id: c6a6e435a8 (このIDを非表示/違反報告)
サリナ(プロフ) - 季紀さん» この書いた作品全てを消して悪女が出る作品を書いてください！m(__)m (2018年4月4日 17時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
ミルキ(プロフ) - 感動しましたので一度この作品の削除(変換)して夢主とハクが結ばれる作品を書いてくださいませんか？お願いしますm(__)m (2018年3月28日 10時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 紫蘭さん» はい、してます！笑 というかばり白澤様です笑 (2017年1月23日 9時) (レス) id: e2d49320a9 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 間違いだったらすみません……。白澤様がどうして『鬼灯の冷徹』の白澤様にしか見えません(´；ω；｀)← もしかしてモデルにしてますか！？ (2017年1月21日 23時) (レス) id: 4fa9a25ace (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作成日時：2014年12月28日 22時
