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流石に勘が身について、もしかして、と思う。でも避ける暇もなく唇が私のそれに触れていた。
余裕たっぷりに目を閉じ、長い睫毛が弓型を描いている。
不意打ちにあったせいか、よろめいて流しに腰をもたれかからせると、舌がぺろりと唇を舐め上げた。
「……甘いな」
「ひゃ、ひゃい?」
「唇に付いていた。クリームとやら、が」
「…卑怯者っ……! びっくりしちゃったじゃない」
わぁっと半べそをかいたふりをして頬を覆う、実際は真赤になったのを隠したいのだけれど。
「まあ、甘いのはそなたらしくていいと思うよ。無性に食べたくなる感じも似てるしね」
「え」
さっきまで食べるの滅茶苦茶渋ってたくせに。
言いたいことは沢山あるけれど、ハク様お色気モードにやられて情けなく私は口をぱくぱくさせるだけだった。ハクはそんな私を軽く見据え、ふっと柔らかく微笑んでから厨房を出ていった。
恥ずかしくなり、床に小さくうずくまる。
「んー、んまっ! お店出せるよ、これ〜」
「大袈裟ですー。でも、流石白澤様、褒められたい女心を分かってらっしゃる!」
保守しておいたカップケーキたちを、白澤様はぽいっと口の中に放り込んだ。なんといっても、今回の本当の功労者は彼だからである。
本当に味わっているのかどうか、そして口から出まかせじゃないのかは疑問だけれど、一応グルメのいうことだし信じるとしよう。
「普段乱暴なアンちゃんが作っただなんて信じられないなぁー」
「ひどっ!」
「イヤでも本当美味しいよ、うん、奥さんにして毎日作って欲しいくらいだ」
流石女タラシ、褒めるのが上手い。そのへんハクとは大違いだ。まぁ、私はそんなハクが大好きで堪らないのである。バカップルだね、てれ。
「ところで白澤様、どこかお辛いところとかございませんか? あと甘いもの食べたら水分が欲しくなりません?」
「いまは大丈夫だけど、どうしたの? 今日はやけにサービスがいいねぇ」
「だって皆遠慮して私に仕事させてくれないんです。いま仕事がしたくて堪らない症候群」
「なにソレ、実はアンちゃんって表では大人しそうに見せて裏では湯屋仕切っちゃってる系?」
「違いますー! ハクと結婚するからって、皆遠慮するんです」
「第二の湯婆婆じゃなくて?」
「違いますってば」
不毛な言い争いをする私たちを包む部屋は、宵闇の中に柔らかく灯りを映しだし、湯屋の外では珍しく雪がしんしんと降り始めていた。
【Cooking Dragon おわり】
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季紀(プロフ) - 一葉さん» 3周も読んでくださる方がいるなんて、感無量です（ ; ; ） 感謝の気持ちで一杯です☺︎ ありがとうございます！ (2022年6月19日 20時) (
レス) id: 597a075cd6 (このIDを非表示/違反報告)
一葉(プロフ) - 見てるこっちもキュンキュンして、かれこれ3周目です笑この様な最高の作品を作ってくれてありがとうございます😍 (2022年6月19日 19時) (レス) @page49 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - Sakuryaさん» まだ見てくださっている方がいると思わなかったので本当に嬉しいです。中学生の時に書き始めてついに大学生になってしまいましたが、大学は暇なので沢山ネタを考えているのでその都度更新していこうと思っています。笑 応援ありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 雪華さん» 暫く書いていないので文章も拙い中そんな風に言っていただけで嬉しいです。雪華さん何度もコメント欄？でお見かけした覚えがあります。いつもありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
Sakurya(プロフ) - 更新されたと通知があり、ものすッッごく嬉しくて！！今後もこういったかたちでいいので、私生活に支障が出ない程度に頑張ってください！ジブリのハクを好きでいてよかったと思える作品です！！ (2019年6月5日 21時) (レス) id: e0447573e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2015年8月17日 23時
