3 ページ46
「あはは、まー君は吸わないよねぇ」
「吸ってみます」
私がそう答えると白澤様は驚いたように私を見た。細い目が限界まで広げられている。
「マ！？」
「煙草吸ったら落ち着くんでしょ？ 私も落ち着きたいもん」
白澤様は首を捻りゝ訝しそうにしながらも自分の吸っていたものを差し出した。
「ま、まぁ……咥えてみ。肺に入れちゃ駄目だよ、むせるから。てゆーか絶対これで最後にしとけよ、君をヤニカスにしてハクに殺されるとか嫌だかんな僕」
自分で誘ったくせに。
そう思いながら私は息を吸い込んでそれを喉に吸い込んだ。ふうと吐き出すと視界が煙で白く濁った。
「……こんなんが美味しいんですか？」
「まー美味しいし、あとは依存だよねぇ」
白澤様はそう言って笑う。私はもう一口だけ吸い込んだけれど、今回は肺に届いてむせてしまった。
「げほっ」
「あー！ だから肺に入れるなって言ったのに！」
白澤様が慌てて私の手から煙草を取り上げ、背中を摩ってくれた。喉がいがいがして、心地悪い。
咳がようやく収まってから、私は涙目で彼を見上げた。
「こんなものもう二度と吸いません」
白澤様は安心したように笑い、私の髪に指を絡ませて梳いた。
「馬鹿だね」
ふっと笑った息が頬にかかる。
あ、この距離感はやばい。
そう思ったが遅かった。白澤様は身を屈めて、いとも自然に唇を重ねようとした。
「だ、だめぇ―！！」
間一髪、掌で防いだ。掌に柔らかい唇の感触がする。白澤様は不満そうに私を見る。
「なんでダメなのさ」
「したくないからですよ！」
「え〜。僕とキスしたくない女の子なんていないのに」
「ここにいるんです、残念ながら」
背中にいつの間にか手が回され。抱き寄せられる中必死に彼の顔を押し返した。私の手に押されて頬を変形させながら白澤様が続ける。
「……あの夜、あんな風に助けてくれたから忘れられないじゃん。君の裸、忘れられなくてしんどいし。もう一回見せて」
「ダメに決まってるでしょ！」
「お願い〜。アンちゃんといいことしたいの」
私は必死に抗戦する。と、そこへ廊下にひょっこりと顔を出した人がいた。この現場を見て顔を青くする。
「A！？ ……と、白澤様！？」
「千尋！ 助けて！ 白澤様に襲われてる！！」
千尋は急いでやってきて白澤様を私から剥がしてくれた。やっと安全地帯に出て肩で息をする。
「ありがとう、千尋」
「いいのよ」
大丈夫？ と千尋は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 526人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
季紀(プロフ) - 一葉さん» 3周も読んでくださる方がいるなんて、感無量です（ ; ; ） 感謝の気持ちで一杯です☺︎ ありがとうございます！ (2022年6月19日 20時) (
レス) id: 597a075cd6 (このIDを非表示/違反報告)
一葉(プロフ) - 見てるこっちもキュンキュンして、かれこれ3周目です笑この様な最高の作品を作ってくれてありがとうございます😍 (2022年6月19日 19時) (レス) @page49 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - Sakuryaさん» まだ見てくださっている方がいると思わなかったので本当に嬉しいです。中学生の時に書き始めてついに大学生になってしまいましたが、大学は暇なので沢山ネタを考えているのでその都度更新していこうと思っています。笑 応援ありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 雪華さん» 暫く書いていないので文章も拙い中そんな風に言っていただけで嬉しいです。雪華さん何度もコメント欄？でお見かけした覚えがあります。いつもありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
Sakurya(プロフ) - 更新されたと通知があり、ものすッッごく嬉しくて！！今後もこういったかたちでいいので、私生活に支障が出ない程度に頑張ってください！ジブリのハクを好きでいてよかったと思える作品です！！ (2019年6月5日 21時) (レス) id: e0447573e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2015年8月17日 23時
