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「私がどれ程肝の冷える思いをしたか分かるか?」
「えっ……ハクさん、ちょっとそれは……」
過保護じゃないですか、とは何故か言いづらくて口の中で呟いた。
ハクは目を伏せて溜息を吐いた。長い睫毛の影ができる。何をしても絵になるって羨ましい。
「……心配するだろう」
肩に置かれていた手がずらされ、ふわりと体を抱き締められる。ハクの体温が、布越しに伝わってきた。
「ちょっ……! はぁっ」
従業員たちは皆上手く気付かないふりをしてくれている。私は真赤になってなってハクを押し返そうとした。この人は本当に何を考えているんだろう。今更だけど、ちょっと変わってる?
「あの、ハク、皆見てるよ」
「気にするな」
「は、恥ずかしいって……あのさ、皆、見てないで助けてよ!」
流石に気恥ずかしくてもはや無気力の犯人を撤収している従業員へ声をかけるが、ハク様に逆らえる者がいる訳もなく、気弱げな笑みを返されただけだった。
とはいいつつも、ハクの温かい抱擁が嫌な訳ではなくて。私は暫く彼の腕の中で目を閉じていた。
「…なんてことがあったの。でも、怒られる筋合いはないと思わない?」
夜中、ようやく湯屋の仕事が終わり、私は女郎部屋のポーチらしき所でミナさんと並んでいた。遠くに揺れる夜景を臨みながら、2人で饅頭を口にする。
この時間に食べたら絶対太るけど。
「そりゃあ、ハクはお前さんのことが可愛くて可愛くて仕方ないんだろうよ」
「でも、だからといって――」
「いいかい、男が可愛がってくれる時は思うことがあってもはいはい言ってニコニコしておきな。それが幸せってもんさ」
「そうかな……」
少し納得できない部分はありつつも、饅頭を口に運んだ。ミナさんの柵の外へ投げ出された綺麗な足が、闇に白く浮かび上がる。綺麗な大人の女の人。
ふと気になりだした疑問を口に出さずにはいられなかった。
「ねえ、ミナさんって美影さんといい関係だったじゃないの?」
「え――」
泥沼で別れた美影さんの名を私が口にしたことが意外だったのか、ミナさんは目を丸くした。真直ぐ綺麗な瞳を見つめ続けると、やがてふっと息を吐いて目を逸らした。
「いやだね、別に美影とはそんなんじゃなかったよ。何べんか乳繰り合っただけ。そんな男は山ほどいるさ」
「……流石」
「こんな仕事をしている以上、仕方ないだろう。……だからね、アンみたいに素敵な男に愛されて幸せに暮らす子を見るとちょいと羨ましくなるよ」
ミナさんが私を羨む?
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季紀(プロフ) - 一葉さん» 3周も読んでくださる方がいるなんて、感無量です（ ; ; ） 感謝の気持ちで一杯です☺︎ ありがとうございます！ (2022年6月19日 20時) (
レス) id: 597a075cd6 (このIDを非表示/違反報告)
一葉(プロフ) - 見てるこっちもキュンキュンして、かれこれ3周目です笑この様な最高の作品を作ってくれてありがとうございます😍 (2022年6月19日 19時) (レス) @page49 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - Sakuryaさん» まだ見てくださっている方がいると思わなかったので本当に嬉しいです。中学生の時に書き始めてついに大学生になってしまいましたが、大学は暇なので沢山ネタを考えているのでその都度更新していこうと思っています。笑 応援ありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 雪華さん» 暫く書いていないので文章も拙い中そんな風に言っていただけで嬉しいです。雪華さん何度もコメント欄？でお見かけした覚えがあります。いつもありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
Sakurya(プロフ) - 更新されたと通知があり、ものすッッごく嬉しくて！！今後もこういったかたちでいいので、私生活に支障が出ない程度に頑張ってください！ジブリのハクを好きでいてよかったと思える作品です！！ (2019年6月5日 21時) (レス) id: e0447573e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2015年8月17日 23時
