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「アン様っ！」
言葉の最後は、体を打つような水音にかき消されて聞こえなかった。微かに光を映していた水中は、真っ暗でゴポゴポと泡の音だけがする暗いだった。水は恐ろしく冷たい。体をさすようで、肺炎になりそうだった。
上の方を見上げると、少しでも水底を照らそうとしてくれているのであろう数個の提灯の灯りと、真っ黒な船底がゆらゆらと波の狭間に揺られて見えた。
白澤様を見つけるまで、上には上がらない。そう決めて、私は暗い暗い川底へと潜っていった。息が持つ時間は最長三分。泳ぐことで酸素を使うから、おそらく実際の時間はもっと短いだろう。
流れは緩やかだったが、川底への深さは３m程あった。３ｍといえば低いようにも感じるけれども、実際に潜ってみるとそれだけで体が震え出すような深さだった。
浮力に逆らってようやく川底まで辿り着く。川底には藻が蔓延っていて、私には全ての絶望が堕ちてゆく場所のように感じられた。
そんな考えを捨て、藻を掻き分け白澤様を探し始める。ゆらゆらと揺れる藻は手に心地悪かった。まるで果てしなく広がる暗い海のようだった。
ほとんど視界も利かないから、手の感触だけで探し続ける。だが、一向に彼は見つからなかった。どこに沈んでいるのかも分からないのだから当然だろう。流れが緩やかだから流されることはないだろうが、これだけ広い場所で白澤様がどこにいるかだなんて予想できる訳がない。
息が苦しくなってきた。今探している所が既に見たことがあるかなどもう分からないが、ただ必死に探すだけだった。白澤様が川に落ちてから既に２分近くが経っている。彼は神だからどうか分からないが人間だったらそろそろ危ない頃だろう。
私はまだ意識がある状態だからいいけれど、泳ぎもできない人がこんな暗い川の底に沈んで一人置き去りにされたらどれ程心細いだろう。息が苦しいのなんて今だけだ。１０分後にはきっと外の新鮮な空気を吸っているのだから、一生懸命彼を探さないとダメだ。なんたって彼は、私を何度も助けてくれた大切な恩人なんだから。
自分を奮い立たせて、再び辺りを探し出した。その時、水流にひらりと白い何かが舞った。暗い闇の中で、それは私を導くかのようにひらひらと揺れていた。
近くに寄って藻を掻き分ける。すると、細長い白い着物を着た体が現れた。
(見つけた！)
探っていくと、端正な顔が藻の間から現れた。それは真っ白で生気がなく、綺麗な形の瞼を閉じていた。
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季紀(プロフ) - 一葉さん» 3周も読んでくださる方がいるなんて、感無量です（ ; ; ） 感謝の気持ちで一杯です☺︎ ありがとうございます！ (2022年6月19日 20時) (
レス) id: 597a075cd6 (このIDを非表示/違反報告)
一葉(プロフ) - 見てるこっちもキュンキュンして、かれこれ3周目です笑この様な最高の作品を作ってくれてありがとうございます😍 (2022年6月19日 19時) (レス) @page49 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - Sakuryaさん» まだ見てくださっている方がいると思わなかったので本当に嬉しいです。中学生の時に書き始めてついに大学生になってしまいましたが、大学は暇なので沢山ネタを考えているのでその都度更新していこうと思っています。笑 応援ありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 雪華さん» 暫く書いていないので文章も拙い中そんな風に言っていただけで嬉しいです。雪華さん何度もコメント欄？でお見かけした覚えがあります。いつもありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
Sakurya(プロフ) - 更新されたと通知があり、ものすッッごく嬉しくて！！今後もこういったかたちでいいので、私生活に支障が出ない程度に頑張ってください！ジブリのハクを好きでいてよかったと思える作品です！！ (2019年6月5日 21時) (レス) id: e0447573e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2015年8月17日 23時
