舟遊び ページ24
それから数日間、私は暗かった。従業員の誰もが心配する程だった。
「アン、どうしたの？」
心配したリカさんが、大きな黒目勝ちの瞳を潤ませながら問うてくれた。私は何と返すこともできず、力なく首を振る。
「何でもないんです。皆にまで、気を遣わせちゃってごめんなさい……」
「そんなことないわよ。私にできることがあったら、何でも言ってね」
「はい、ありがとうございます」
気分の高低で周りの人を巻き込んでしまう自分が嫌だった。最近、自己嫌悪のループに嵌ることしかない。
リカさんは心配そうに私を見ながら、仕事に戻っていった。
あれからハクはめっきり私を避けるようになった。廊下ですれ違っても目を合わせることもしないし、話す時はすっかり冷たくて業務連絡のような内容しか口にしなかった。もっとも、全て私が招いた結果なんだけれど。
でも、このままハクとの仲がどんどん凍っていって、いつか結婚の話もなかったことになったら――と考えると、背筋がぞっと冷える思いがする。
両想いになれたら、何でそれだけでハッピーエンドに終わらないんだろう。
「お、アンちゃん！ いいところに」
前から、今の私の気持ちとは対照的な楽観的な声がかけられた。何だろうと顔を上げると、いつもと変わらない笑みを浮かべた白澤様が立っていた。
「白澤様？ お久しぶりですね」
「そういや暫く会ってないねぇー」
「どうなさったんですか？」
「ただの厠の帰りだよ。……あ、そうだ、これから舟遊びするんだけどもちろんアンちゃんも加わってくれるよね？」
「……え？ 舟遊び？」
「ほら、川に屋形船出して遊ぶって言ったでしょ。そろそろ夕方になって水量も増してきただろうし、これからが遊び時だよぉ。この前一緒に入ってくれるって言ってたよね？」
「ああ……」
そういえば、そんな約束をした。ような、気もする。
と、白澤様の骨ばった手がが私の手をぐいと掴んで引っ張った。
「よし、そうと決まったら行こう！ もっともその前にちょっとおめかしして貰うんだけどねぇー」
「えっ！？」
私の様子なんか関係なしに、彼はぐいぐいと引っ張って客室へと連れていった。そこには、沢山の綺麗な着物が並べられてきゃいきゃいと湯女で賑わっていた。何が始まっているのか分からず、私は部屋の前で首を傾げた。
「こんなに、綺麗な着物を沢山どうされたんですか？」
白澤様は赤い化粧が施された目尻をきゅっと萎めて、床に転がっていた簪を拾い上げた。
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季紀(プロフ) - 一葉さん» 3周も読んでくださる方がいるなんて、感無量です（ ; ; ） 感謝の気持ちで一杯です☺︎ ありがとうございます！ (2022年6月19日 20時) (
レス) id: 597a075cd6 (このIDを非表示/違反報告)
一葉(プロフ) - 見てるこっちもキュンキュンして、かれこれ3周目です笑この様な最高の作品を作ってくれてありがとうございます😍 (2022年6月19日 19時) (レス) @page49 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - Sakuryaさん» まだ見てくださっている方がいると思わなかったので本当に嬉しいです。中学生の時に書き始めてついに大学生になってしまいましたが、大学は暇なので沢山ネタを考えているのでその都度更新していこうと思っています。笑 応援ありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 雪華さん» 暫く書いていないので文章も拙い中そんな風に言っていただけで嬉しいです。雪華さん何度もコメント欄？でお見かけした覚えがあります。いつもありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
Sakurya(プロフ) - 更新されたと通知があり、ものすッッごく嬉しくて！！今後もこういったかたちでいいので、私生活に支障が出ない程度に頑張ってください！ジブリのハクを好きでいてよかったと思える作品です！！ (2019年6月5日 21時) (レス) id: e0447573e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2015年8月17日 23時
