2 ページ3
「ねえ、ハク」
足に抱き着いたままハクを見上げる。彼は、ん?というように眉を上げた。
「西洋風の結婚式のいいところ……知ってる?」
「知らないけど」
「皆の前で、キス、できるよ」
「!!」
彼の表情に一瞬の動揺が閃いたのを私は見逃さなかった。そこからはもう、3割くらい持って目を閉じて語り出す。
「結婚式ではね、花嫁はヴェールって光に透ける薄い布を頭に被るの。神父の前で愛を誓った後、二人は向かい合い、花婿がヴェールをそっと持ち上げるの。そして、皆に見守られながら永遠のキスを……」
若干ディズニーが入らないことはなかったけれど、嘘は吐いていないと思う。多分。
ハクの反応を待つけれど、何の音沙汰もない。仕方なく薄く目を開き、彼の様子を伺った。と、彼は猫のように翡翠の瞳を見開いて前を見つめていた。顔立ちがキツいだけに、やや怖く見える。
「えっと……ハク? 大丈夫?」
「……て……は……ない」
「え?」
「……考えて……やらないことも、ない」
ぽつりと形の良い唇から言葉が紡ぎだされる。あまりにも表情が笑っていないので、肯定的に受け止めていいのかどうか迷った。
「でも、ハク偉い神様の子孫なんでしょ? いいの?」
「……まだ分からないけれど」
突然、強く腕を引っ張られた。グンと肩を襲う衝撃と共に、彼の前に立たさせられた。彼は私の目を強く見つめたまま、いま初めて笑った。
「誰にも文句を言われずにキスできる機会なんて、今まで中々なかったからな」
風に黒髪を揺らし、猫のように涼しげに微笑む。ああ、この笑顔が好きなんだっけ。
「……まぁね」
照れ臭くなってぷいと顔を逸らす。すると、ハクが手首を掴んだまま顔を覗き込んできた。
「なに、照れてるの?」
「違うし!」
「ふふ、バレバレだよ。私のAは可愛いんだから」
「私は私ですー。ハクのものじゃないですぅー」
「そんなことを言えるのは今のうちだよ」
優しく掌が両頬を包む。あっ、と漏らした声は彼の唇の中へ吸い込まれていった。
なんだ、これじゃ結婚式でわざわざキスする意味ないよね。
【どっちだっていいよね。おわり】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 526人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
季紀(プロフ) - 一葉さん» 3周も読んでくださる方がいるなんて、感無量です（ ; ; ） 感謝の気持ちで一杯です☺︎ ありがとうございます！ (2022年6月19日 20時) (
レス) id: 597a075cd6 (このIDを非表示/違反報告)
一葉(プロフ) - 見てるこっちもキュンキュンして、かれこれ3周目です笑この様な最高の作品を作ってくれてありがとうございます😍 (2022年6月19日 19時) (レス) @page49 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - Sakuryaさん» まだ見てくださっている方がいると思わなかったので本当に嬉しいです。中学生の時に書き始めてついに大学生になってしまいましたが、大学は暇なので沢山ネタを考えているのでその都度更新していこうと思っています。笑 応援ありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 雪華さん» 暫く書いていないので文章も拙い中そんな風に言っていただけで嬉しいです。雪華さん何度もコメント欄？でお見かけした覚えがあります。いつもありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
Sakurya(プロフ) - 更新されたと通知があり、ものすッッごく嬉しくて！！今後もこういったかたちでいいので、私生活に支障が出ない程度に頑張ってください！ジブリのハクを好きでいてよかったと思える作品です！！ (2019年6月5日 21時) (レス) id: e0447573e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2015年8月17日 23時
