マリッジブルー ページ19
その日は、真面目に書類を届ける目的でハクの部屋を訪ねていた。了承を得て、部屋へ入った時床の上に色々なものが散らかっているのを見つけた。
「あれ？ これ、どうしたの？」
尋ねると、ハクは頬に垂れた一筋の髪を耳にかけながら微笑んだ。
「少し部屋が汚れてきたから、整理しようと思ってね。昔のものが溜まってきたんだ」
「へえ。全然汚れてないのに」
「そうでもないよ」
見るからに高そうな骨董品のようなものも数個あって、こんなものどこで手に入れてくるんだろうと思って見つめた。書類を捲り始めたハクを待って、床の上のものを物色してみる。
「本とか持ってたのね」
「そうだね。気に入ったものは何度も読み返すから」
「へえ。意外……」
本を読むことで敢えて新しい知識を仕入れようとするタイプには見えなかった。
「あれ、これは何？」
私は屈み込んで漆塗りの箱を覗いた。そっと蓋を開けてみると、中には十個余りの紅や、櫛、簪といったものが入っていた。
こちらを見たハクが気付いて目を見開いた。
「あっ、それは駄目！」
慌てて目の前に来て蓋をパタンと閉じられる。そのあからさまな動作を見て、私は泣きたくなった。
「……もう見たって顔をしているね」
「見ましたとも」
「……すまない」
「そういうのは捨てておいてよ……」
「うん……」
私とハクとの間に、気まずい空気が流れる。
『ハク？ ああ、何回か契ったよ』
頭の中に、昨日の湯女の声が蘇った。今目の前にいるハクと、あの人が、私の知らないところで体を重ねたんだ。
私は頭をぶんぶんと振って、慌ててその考えを追い出した。
「……いいね。ハクはモテモテで」
「何、その言い方は……」
「だって事実でしょ。部屋に、その紅とか櫛を忘れてくだけの女の子が来たんでしょ。すごいね」
「……」
「ねえハク、私ハクのこと大好きだからこそあなたが知らない女の子たちと何度も夜を過ごしたんだって考えるとすごく辛いよ」
「既に過去のことだ」
「うん、私もそうやって割り切ろうとはしてるの。でもね、昔のハクも、今のハクも、未来のハクも全部一人占めしたくなっちゃって……」
「……」
「ごめん、気持ち悪いわよね」
「いや……」
ハクの翡翠色の瞳が、じっと私を見つめた。しなやかな指先が、そっと私の顎に触れる。
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季紀(プロフ) - 一葉さん» 3周も読んでくださる方がいるなんて、感無量です（ ; ; ） 感謝の気持ちで一杯です☺︎ ありがとうございます！ (2022年6月19日 20時) (
レス) id: 597a075cd6 (このIDを非表示/違反報告)
一葉(プロフ) - 見てるこっちもキュンキュンして、かれこれ3周目です笑この様な最高の作品を作ってくれてありがとうございます😍 (2022年6月19日 19時) (レス) @page49 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - Sakuryaさん» まだ見てくださっている方がいると思わなかったので本当に嬉しいです。中学生の時に書き始めてついに大学生になってしまいましたが、大学は暇なので沢山ネタを考えているのでその都度更新していこうと思っています。笑 応援ありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 雪華さん» 暫く書いていないので文章も拙い中そんな風に言っていただけで嬉しいです。雪華さん何度もコメント欄？でお見かけした覚えがあります。いつもありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
Sakurya(プロフ) - 更新されたと通知があり、ものすッッごく嬉しくて！！今後もこういったかたちでいいので、私生活に支障が出ない程度に頑張ってください！ジブリのハクを好きでいてよかったと思える作品です！！ (2019年6月5日 21時) (レス) id: e0447573e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2015年8月17日 23時
