私だけじゃない ページ15
ハクはモテる。
寧ろモテていない日を見たことがないというくらいに。
私自身、彼の容姿は見る度に惚れ惚れしてしまうし、素敵な人だというのも分かっていたけれど、それでも彼が見る度に違う女性からちやほやされている姿を見るのは辛かった。
「ハク様、お泊まりになったお客様が、クレームをつけて代金を支払ってくださらないのですが……」
「納得のいくまで説明したのか？」
「はい、もう小一時間はしていますわ。けれど、首を振るばかりなんです。きっとハク様が来てくださったらあのお客様も納得くださると思うから、来ていただけませんか？」
湯女の相談に乗っていたハクが、ちらりとたまたま廊下で壁の絵画を付け替えていた私に目をやった。
「……兄役に頼みなさい。彼ならどうにかしてくれよう」
一応気は使ってくれているらしい。
どことなくほっとしたその時、
「やっぱり、ハク様じゃないと無理だと思うんです！ 来てください！」
何ていうことだろう、湯女はよりにもよってハクの手を掴んで走り出した。私は呆然として廊下に小さくなってゆく二人の背中を見つめた。
……いや、普通彼女のいるすぐ傍でそんなことする？ 私たちがもう少しで結婚するって知ってるよね？ せめて、手を繋がなくたって……
ショックを受けて指先の力が抜けて、持っていた私の腕の長さくらいはある絵画が床へと落ちた。ガシャンと大きな音がしてびくりと肩を震わせる。
しまったと思いながら足元に目を落とすと、ガラス製の細かな花の装飾があしらわれた額縁は粉々に割れていた。
「あ……どうしよ……」
体の中をサァッと波が通り抜けてゆくような感覚。また呆然として立ち尽くす私の後ろに、音を聞きつけて従業員たちが集まってきた。
「うわ、これはヤバいだろ……湯婆婆が自分で買ってたやつじゃん」
「壊したのかい」
「何あれ……」
ぼうっとしてたから、こんな失敗をしてしまった。最悪だ。
私は慌てて屈み込んで、ガラスの欠片を集めようと手を伸ばした。
「鈍くさっ」
「人間だからじゃないの？」
八つ当たりだと分かる言葉も混じっている。こういう風に言う人たちは、悪口は言うけど決して助けてはくれないんだ。まあ、自業自得なんだけど。
その時、破片を集めていた私の手に、白くて伸びやかな白い手が重なった。
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季紀(プロフ) - 一葉さん» 3周も読んでくださる方がいるなんて、感無量です（ ; ; ） 感謝の気持ちで一杯です☺︎ ありがとうございます！ (2022年6月19日 20時) (
レス) id: 597a075cd6 (このIDを非表示/違反報告)
一葉(プロフ) - 見てるこっちもキュンキュンして、かれこれ3周目です笑この様な最高の作品を作ってくれてありがとうございます😍 (2022年6月19日 19時) (レス) @page49 id: 85091bc4a0 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - Sakuryaさん» まだ見てくださっている方がいると思わなかったので本当に嬉しいです。中学生の時に書き始めてついに大学生になってしまいましたが、大学は暇なので沢山ネタを考えているのでその都度更新していこうと思っています。笑 応援ありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 雪華さん» 暫く書いていないので文章も拙い中そんな風に言っていただけで嬉しいです。雪華さん何度もコメント欄？でお見かけした覚えがあります。いつもありがとうございます。 (2019年6月6日 13時) (レス) id: 8fd0d878f8 (このIDを非表示/違反報告)
Sakurya(プロフ) - 更新されたと通知があり、ものすッッごく嬉しくて！！今後もこういったかたちでいいので、私生活に支障が出ない程度に頑張ってください！ジブリのハクを好きでいてよかったと思える作品です！！ (2019年6月5日 21時) (レス) id: e0447573e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2015年8月17日 23時
