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「2人とも、行ってらっしゃい！」
笑顔で見送ってくれるのはリカさん。私とハクは湯婆婆がどこから調達してきたのだろうか現世向きの服を着て油屋の入り口に立っていた。私はウエストがきゅっと引き締まった薄紫のワンピース。ハクはただの白いスウェットに黒のストレートのスラックスだった。だぼだぼしている感じがスケボーでもしてそうで少し面白い。
「行ってきまーす」
久々の女の子らしい服に私はにこにこと手を振り返す。ハクは朝だから低血圧なのか、表情はにこりとも変えなかったが小さく手を振り返していた。
「一応商談なのに何故スーツとやらじゃないのだろうか」
ハクが隣でぼやく。でも今風でいいよ、と私は返した。
「美影さんとの商談ってどれくらい時間がかかるの？」
「さあ。小一時間もすれば終わるだろ」
「ほんと！」
私は目を輝かせて身を乗り出した。ハクがびくりとして身をすくめる。
「な、なんだ」
「じゃあ現世でデートしようよ！」
「でーと」
「パンケーキはやっぱ外せないよね！ あと、やっぱり温泉しかないド田舎に住んでる身分としては渋谷新宿原宿のあたり行きたいなっ」
ハクは戸惑っていたがどうやら私の言葉尻から「デート」の意味を感じ取ったらしい。小さく頷いていた。
「いいよ、Aの好きなようにしようか」
「えっ、いいの？」
そんなもんは却下だ、と仕事中にプランを提案しても眉間に皺を寄せて怖い顔をしているハク様が素直に受け入れてくれたことに驚いた。思わず素っ頓狂な声を出してしまう。ハクは小川の飛び石を渡るとき、私の手を持って支えながら微笑んだ。
「ああ。今日はせっかくのでーととやらなのだから、私のお姫様の言いなりになるよ」
端正な顔立ちに、微笑んで柔らかい色を持った翡翠色の瞳が際立つ。いくら付き合っても、この人の顔の良さには慣れないものだ。
抜けるような青空。緑色の草原。……そして、その向こうにそびえ立つ赤いトンネル。
私の生まれた世界へと繋がる場所。
久しぶりにその世界へと戻るのは勇気のいることだった。思わず怖気付いて立ち止まった私に、ハクは涼しい顔で声をかけた。
「さ、行くよ」
彼の黒髪が吹いてきた爽やかな風に一片舞う。
続く (更新停止中)
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あまね(プロフ) - 二年ぶりです。どうも！好きです (8月4日 6時) (
レス) @page2 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ゴンザレス(プロフ) - こんにちは！前々から何度も読み返させて頂いてます。とても読みやすい上にきゅんきゅんするので大好きです！ (2022年12月3日 13時) (レス) @page2 id: 4656a22359 (このIDを非表示/違反報告)
かたこり - 金曜ロードショーで何年か前に見てハクにどっぷりハマって行き着いたのがここでした！あぁ、尊い← (2021年8月14日 11時) (レス) id: 150f83a4c1 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - え？？？神ですか？あ、神ですね！( ´∀`)ﾊﾊﾊ好きです（唐突な愛の告白←） (2021年1月10日 0時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - はるかさん» そんなこと言っていただけて感無量です泣 ちょっとでも私の書いたものがはるかさんの楽しい時間に貢献できたなら喜ばしい限りです。 (2020年7月9日 4時) (レス) id: a6752b7796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2019年6月12日 1時
