現世へ ページ1
「え。私も！？」
ハクに現世へ二人で行く任務を受けたという話をされ、私は驚いて思わず素っ頓狂な声をあげた。ハクは渋い顔で頷いた。
「ああ。断ったのだけれど、湯婆婆の達しでどうしようもなかった」
「そうなの……」
ハクの表情は何故か沈んでいたけれど、私は不安と同時に少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
もう捨てたと思っていた、私の生まれた世界。いわば故郷である。この四季もない入り乱れた世界も好きだけれど、あの世界へと少しでも帰れるんだ。
「ハクは、楽しみじゃ……ない？」
上目遣いに彼を見上げると、彼は私の目を真っすぐに見つめながら戸惑うように造詣の整った唇を開いた。
「カオナシの野郎の分館に行けだと」
「え」
苦々しく、吐き捨てる様に彼は言って目を逸らした。
そういうことか。全てを理解して、頭の中でパズルが組み合わさって完成した。
「何で私も行くのかな？」
「さあ、奴がそなたに気があるからじゃない」
また吐き捨てるように述べ、彼はふくれっ面をする。
こんなハクを見る機会は滅多になかった。……可愛い。
そう感じ、私は骨格が以前よりもしっかりとしてきた彼の体に腕を回す。
「なーに、やきもち？ ハク様ってば可愛い」
ハクはうんざりしたように私の腕を外しながら言った。
「違う、事実だよ。この前の雪が降った朝のことを覚えてるか？」
「うん、覚えてるよ」
「あの時、奴はそなたに会いに来てた。私はそのことに気付いてたから、そなたを部屋に帰らせ一人で残った」
「そうだったの！？」
全く気付かなかった。私は神であるハクと違って人間だから、そういう第六感的なものは働かず気配を察しにくい。あの時美影さんがいたことも露とも知らなかった。
「吹っ切れたとは言っていたけれど……そなたに会わせるのは嫌だなあ」
黙ってみていると、ハクは大きなため息をつき今度は逆に私の膝の上に倒れ込んだ。今日のハクには覇気がなく犬のようだ。可愛らしくてこっちも好きだけれど。
私は彼の錦糸のような黒髪に手を差し入れてさらさらと梳いた。
「大丈夫よ。美影さんだって今頃女の子の一人や二人、連れ込んでるわ」
「そなたが更に美しくなったから……また好きになられでもしたらと思うと気が気でないんだよ」
白い肌に長い睫毛の影が差している。その目元から唇にかけてが人形のようだった。
私はハクが嫉妬の感情を久々に露わにしてくれたことを嬉しく思い、その瞼に口づけた。
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あまね(プロフ) - 二年ぶりです。どうも！好きです (8月4日 6時) (
レス) @page2 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ゴンザレス(プロフ) - こんにちは！前々から何度も読み返させて頂いてます。とても読みやすい上にきゅんきゅんするので大好きです！ (2022年12月3日 13時) (レス) @page2 id: 4656a22359 (このIDを非表示/違反報告)
かたこり - 金曜ロードショーで何年か前に見てハクにどっぷりハマって行き着いたのがここでした！あぁ、尊い← (2021年8月14日 11時) (レス) id: 150f83a4c1 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - え？？？神ですか？あ、神ですね！( ´∀`)ﾊﾊﾊ好きです（唐突な愛の告白←） (2021年1月10日 0時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - はるかさん» そんなこと言っていただけて感無量です泣 ちょっとでも私の書いたものがはるかさんの楽しい時間に貢献できたなら喜ばしい限りです。 (2020年7月9日 4時) (レス) id: a6752b7796 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作者ホームページ：http://nanos.jp/catsong2/
作成日時：2019年6月12日 1時
