近年の神事情 ページ43
それは仕事中のことだった。久し振りに、美影さんから「客として」呼び出された。一応私たちは婚約者という立場と取っているので、何だか妙な心地になる。
「美影さんて、何でこんな湯屋に泊まりこんでる暇があるの?」
襖を後ろ手に閉めながら、私は呆れて問うた。美影さんは畳の上に寝っ転がり、お菓子の包装紙で紙飛行機を折っていた。複雑に谷折り山折りされていて中々クオリティーが高い。
「言ったでしょ。大分前に天照大御神様のとこでバイトしたから金がたんまりあるんだって」
「自分の神社にいなくていいの?」
「えー? あー……人様の願いごと聞くのなんて暇だし。おまけに人間に姿見せたら和装イケメンがいるって騒がれるしね、Aといる方が楽」
「これだから顔が良い奴は」
「何、事実でしょ?」
真黒な瞳できゅっと見上げられると、胸の奥が締め付けられるように甘く痛んだ。いつもこの顔に騙されてしまう。
私はそれを表情に出さないよう努めながら彼の近くに座った。
「てか、日本の神様それでいいの?」
「いいんじゃないの」
「私、美影さんのお嫁さんになったら具体的にどこで暮らせばいいの?」
最近気になっていた質問を口にしてみる。少なくとも、湯屋に留まることはできないはずだから。まさか神社にテント張って住まなきゃいけないとかだったらどうしよう。
だが、彼の答えを聞いて安心した。
「あー……神々は人間界以外にも住んでる場所があってね。何層かに別れてて、僕はそのうちの欲界に住居を持ってる。でも、普段は人間界で運営する湯屋の分館で暮らすことになりそうだよ」
「色欲たっぷりの美影さんにぴったりな世界だね」
「失礼な」
「別荘みたいなもん?」
「そうそう。僕の家大きいよー鬼ごっこだってかくれんぼだって好きなだけしていいよ」
「いや、しないよ!」
私の美影さんは小さく笑った。とりあえず私は美影さんの神社にお参りには絶対に行かないと決意した。
でも、天界が数層に分かれているとは初耳だ。ということは、ハクにもそこに居場所があるのだろうか。いや、でも彼の体は人間界で既に失われているから……複雑だ。
と、ついついハクのことを考えてしまっている自分に気が付いた。何を考えているんだ。もう奴のことは忘れようと自身に誓ったばかりだというのに。
「それより、A」
不意に美影さんが私の太腿を掴んだ。驚いて固まっていると、彼は体をのそのそと動かして私の膝の上に頭を置いた。
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 425人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
