利己的ではない ページ5
「あ、今度さ、一緒に人間界行こう」
不意に美影さんが口を開いた。多分気まずい空気に耐えられなかったのだろうが、私もこのままずっと沈黙が続くのは嫌だったので乗ることにする。
「行きたいです! だけど、湯婆婆様が許してくれないと思う……」
「何、金を掴ませればあっという間だし」
「悪い大人だ」
「白澤様も最近よく人間界来てるよ。彼がオーナーの湯屋の分館を作る予定なんだ」
「分館!? 知らなかった。白澤様と仲が良かったんですね」
「いや、ぶっちゃけ苦手だけどね。怖いし」
何故ハク(様)といい美影さんといいそんなにも白澤様を怖がるのだろう。
「まぁ、普段は僕がそこを管理する予定なんだ。湯婆婆に頼まれてさ」
「大役ですね!」
「そう。それに、神社に本体があるから人間界に居ると便利だしね」
「本体?」
「鎌倉時代に作られたお面」
「はは、私生まれてない」
鎌倉時代とか、私のご先祖様は何をしていたんだろう。
誰かから美影さんは元々は厄神なのだと聞いていたのもあり、彼がちゃんと現世では神社で祀られていると知って安心した。
「……でも、ちょっと悲しいかなぁ」
「は? 何で?」
「……だって、美影さんが向こうに行ったら中々会えなくなっちゃうでしょう?」
彼を見上げると、どこか意表を突かれたような表情をしていた。
利己的な子供っぽい発言をしたことを少し後悔して、私は彼から目を逸らして庭の向こうの空を見つめた。小さな雲は東の方へ消えかかっていた。
「じゃあ、着いて来なよ」
ふと美影さんが口を開いた。
「え?」
「僕に着いて来なよ。それで現世で一緒に暮らそう」
真剣な黒い瞳だった。でも、きっと場に合わせて言ってくれているだけであろうから私は小さく笑って再び正面を見た。
「湯婆婆様さえ許してくれればなぁ」
「そんなの、僕がどうにかしてみせるよ」
「あはは、そんなこと言われたら夢を見ちゃう」
「――僕は本気だよ?」
静かな口調で言われる。それが胸の奥まできゅっと響いて、私は美影さんを振り返った。彼はじっと私を見つめていた。それが本当の言葉だったら大変な意味になってしまうのに、冗談だと捉えることが難しくて口元からすぅっと笑顔が消えていった。
熱を持った風が庭を通り抜けて行った。
「……絶対湯屋から連れ出してみせるから。待ってなね」
暫く後、彼はそれを言い残して縁側を去った。
(かっこつけてたけど、ハクと別れた原因はかなりの率を美影さんが占めているのだ)
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
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モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
