誰にも見えない ページ37
店を出て、私たちは湯屋の前の橋へと向かった。流石にこの雨だと呼び子もお客様もいない。二人で傘に入ったまま、赤い欄干にもたれかかった。雨の向こうに熊野の壮観と灯りが霞んで見えて綺麗だった。
欄干に手を置くと、美影さんが自身のそれを重ね合わせた。私よりも大きくて、長い指の節々が出っ張っている。
「……不思議だね。美影さんが神様なんて」
「そう? 僕は元々妖怪だったけどね」
「妖怪⁉」
「妖怪だったのが神格に段々近付いてって神になったんだ。……ある出来事以来汚れてしまって祟り神になったんだけど……なんだかんだあって元に戻れた」
「へぇ……彼氏が元祟り神、ね」
冗談めかして言って二人で笑い合う。
でも、美影さんが私を慮ってくれたことが伺われた。だって、なんだかんだというのはきっと千尋のおかげ、という意味が含まれているのだろうから。ハクと千尋のことに気遣って濁して言ってくれたのだろう。
「Aは、僕みたいのが恋人なんて嫌?」
ふと、美影さんが私の手をぎゅっと握り締めた。身長差で首が少しきついけれど彼の黒い瞳を見上げる。
「嫌って?」
「だって……ほら、ハクは神聖なかなり上級の神でしょ。顔が良いから女にもモテるし」
「美影さんだって人気あるでしょ?」
少し迷うように私の手を揉んでいた美影さんの掌をぎゅっと握り返した。
「……ないよ……」
「美影さんは仲良くない人には辛辣だもんね。でも、私は美影さんが本当は優しくてすごくかっこいい人だって分かってるよ」
少し首が凝ってきたのを感じながら微笑んでみせる。美影さんがの黒い瞳が波のように揺らめいた。まるで黒い鏡のように二人の私が映っている。
彼が喉を鳴らす音がした。目を逸らさないまま、重なっていた掌が一つになった。
「……A」
低い声で名を呼ばれる。私は胸が騒ぐのを感じた。少し冷たい掌が頰に触れる。
暫く見つめ合った後、近付いてきた唇が優しく私のそれを啄んだ。傘に打ち付ける雨の音が響いている。
角度を変えて、雨は寒いのにキスは火傷するかと思うくらい熱かった。多分、気持ちの持ちようなんだろうけれど。
傘の下、天照大御神様からも隠れて二人だけ。
やがて舌が入ってきて、逃げないよう押さえ込むかのように腰を抱かれる。
目を閉じた時、何故かふと胸が痛んだ。
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
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モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
