敬語 ページ36
「あ、でも一つだけ人間と完全に同じ機能がある」
美影さんが人差し指を立てた。
「何ですか?」
「生殖機能」
「……」
私たちの間に微妙な空気が流れる。美影さんは満面の笑みで相変わらず人差し指を立てている。コーヒーを淹れている黒い影も照れたように店の奥に引っ込んだ。
……美影さん、それドヤ顔で言うことじゃないよ。
「美影さんのばかぁ」
「え⁉」
「あと、変態」
私は頬を膨らませてカウンターにもたれかかった。ようやく美影さんの腕の熱が離れた。
「良いじゃん、Aと子孫を残せるんだから」
「……」
「子供、いなかったんでしょ?」
美影さんが再び背を屈めてきて耳元で囁いた。
そう、今日二人で商店街に来たのは他でもないそのことについて話し合いに来たからなのだ。美影さんは昨日までずっと現世に行っていて、夜遅くにやっと戻ってきたところだ。
「……そうね。妊娠してなかった」
「パパになれないのは残念だけど、Aとの新しい子供が作れる点については、僕は正直嬉しいよ」
「うん……」
ハクは、お腹に子供がいたら私を強引にでも娶るつもりだったと言っていた。本当はいけないんだろうけれど、複雑な気持ちになってしまって仕方がない。
「お、ありがと」
美影さんが厨房の方に向かって手を差し出した。伏せていた顔を上げると、黒い影が注文した飲み物をを差し出してくれたところだった。
「A、はい」
「あ……ありがとうございます」
私も伏せていた顔を上げてレモンティーを受け取る。ピンクがかったグラスは少し汗をかいていたが、カランコロンと氷の心地良い音がして耳に心地よかった。
「……ねぇ、Aさ」
「はい?」
「僕に敬語で話すのやめない?」
唐突に切り出される。私はレモンティーの一口目をゆっくりと口に含んだ。
「何で?」
「だって、君はもう僕の彼女じゃないですか」
「……うん」
「敬語だと距離置かれてる気がするんですよ」
「そうなん?」
「もっともっと頼ってください」
「……分かった」
恋人同士になったとはいえ、美影さんは一応お客様でその上私よりもずっと年上だから少し気が引けてしまう。でも、敬語でない方が彼がやりやすいというのならそうするに越したことはない。
「で、美影さんは何で敬語なの?」
「Aに僕の気持ちを体験して貰おうと思って」
「特に何も感じなかったよ」
「まじか」
雨に閉ざされた店の中、ふわりとコーヒーの渋くて柔い香りが広がった。
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
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モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
