幸せな結末? ページ21
本当に本当に、私とハクはもう関わりがなくなってしまうのだ。元恋人という点を除いては。
いい加減に私も、覚悟を決めねばならぬ時期が来ている。
「……A? 大丈夫?」
不安気な表情をした美影さんが私の顔を覗き込んでいた。私はハッとして、慌てて顔に笑顔を馴染ませた。
「何でもないです。一億円なんてお金今まで関わったことがないからぼーっとしちゃった」
「はは、Aの価値はお金では計り知れないよ」
「そんな甘い言葉言われたら私調子に乗っちゃいますよ?」
と、私を覗き込む顔の頬に先程の血の滲んだ傷痕があるのを見つけた。地味に傷痕が深く、ぷっくりと半球状に血が滲んでいる。彼は神様だから大丈夫なんだろうけれど、痛々しさに私は顔をしかめた。
「……美影さん、ちょっと屈んでくれませんか」
「え?」
「ちょっとだけ」
彼は怪訝そうな顔をしながら長身を屈めた。私はもう少し、と何度も頼みながら爪先立ちをして背伸びする。試行を重ね、何とか美影さんと同じ目線の高さになった。
私は波打つ黒髪に手を差し込んで、頬から耳の方へとそっと除けた。何をするのかと訝しそうな横顔にそっと顔を近付ける。傷口のある部分に狙いを定め、そっと唇を落とした。柔らかい頬の感触がする。
流石に舐めるのは衛生上によく無いと思ったから、唇で血液を音無く吸い取る。顔を離した時には、口の中が血の味になっていた。
これが私から美影さんへの、初めてのキスになるのかな。
「……え?」
美影さんは、背を屈めたそのままの姿勢で固まっていた。頬が赤い。彼は信じられないというように私を見た。
「A……」
「ほら、美影さんが前舐めときゃ良いって私が膝怪我した時に言ってたでしょ。あの時くすぐったかったから、仕返しです」
「はわ……」
彼は何度も長い睫毛を瞬いた。普段は気だるげに半分瞼が下りていることの多い瞳が、今だけはぱっちりと見開かれていた。
「可愛すぎ! 鼻血出る!」
「え、それだけは勘弁して下さい! 多分私が湯婆婆様に拭き掃除させられますから!」
「ああもう、世界一の幸せ者にしてやるよっ」
「ぶえっぐるじっ」
会話が噛み合っていない。
美影さんは屈めていた背筋を伸ばし、強い力で私を抱き締めた。頬を両手で包み込まれる。
息が出来ない程の抱擁に眩暈を感じながらも、誰かに包まれていることの温かさを感じた。凄く安心する。
……これだって、幸せな結末の一つなのかもしれない、そんな考えが頭に浮かんだ。
★ハクちゃまの秘密★
おかっぱと言われると腹が立つ。
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モッケ - 本当にごめんなさい、許してください (2015年6月27日 13時) (
レス) id: 7cabc5d692 (このIDを非表示/違反報告)
星宙(プロフ) - 季紀さん» 年がら年中からかわれてたら嫌になるもん！ おかすぃくないよー♪ やっちゃった…美影さん犯罪に手を出してしまった…←笑笑 (2015年5月23日 20時) (レス) id: d32e317eb5 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 星宙さん» からかいづらいと言われて喜ぶ人も私は初めて見た♪ おかすぃー♪ ハクさんピンチだね! 美影さんやっちゃってるし! (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 朱雀@忙しす先輩さん» テスト一週間前に修学旅行(TT) ね、あてちゃってるよね笑 (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
季紀(プロフ) - 杜さん» そこまで言って頂けて嬉しい(笑) ハク落ちになったら美影を、美影落ちになったらハクの中編をそれぞれ書く気でいます。夢主は変わりますがね(^^; (2015年5月23日 19時) (レス) id: 61b5a6cbc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki
| 作成日時：2015年4月8日 18時
