兎とお揃い ページ38
｢うーん。おや？よく見たら、君も口端に片方だけだがホクロがあるではないか！｣
｢はは･･･え？｣
Aは、突然の話題の転換に思わず聞き返した。すると、鶴見は悪巧みをする子供のようにニヤッと笑った。
｢なぁ、美男子も美女も条件は左右対称だと思わないか？｣
｢え？｣
Aは、鶴見がまたまた話題を変えたことにただ、短く発することしか出来なかった。
｢な、なんのことですっ──?!｣
Aは、鶴見が一瞬で目と鼻の先にいたため、言葉が最後まで出なかった。そして、鶴見はAの顔に持っていたペンを近づけた。
｢君の口の片端にもう一個、ホクロをまるくまーるく描いてやる〜！｣
｢あ･･･！｣
(つ、鶴見中尉ちかい近すぎます･･･でも、嬉しい･･･あ、違う、私、な、何考えて･･･！)
Aは、その鶴見の麻薬のような施しに不思議な気持ちを抱いた。
｢ふふ･･･Aさん。これで、ますます可愛くなりましたね！僕とお揃いです！｣
｢それはちがうぞ、宇佐美上等兵。貴様は鶴見中尉殿から、先程ホクロ君を描かれキエエェ！｣
｢何かある度に叫ぶのはやめてください！｣
(一瞬だけだが、川田さんが宇佐美と同じような恍惚とした表情を浮かべたように見えた･･･気のせいか？)
鯉登を抑制しつつ、Aに対して疑問を抱く月島だった。しかし、それは全く気のせいではないことを後に知ることとなる。
｢確かに鯉登少尉のいうとおり、ふたり揃いじゃないな。そう、つがいならば並んだ時に、左右対称に揃っていた方が、より美しく感じられる･･･そうだろう、川田殿〜？｣
｢ひ、ひぃ･･･?!｣
Aは、その鶴見のちょっとうわずった声に嫌な予感を感じながら、悲鳴をあげた。あれ、これはさっきも聞いたような･･･と、どこか他人事のように思いながら。
｢君のこのホクロにもこうしてこうして体を描いて走らせてやる〜！｣
(あ、ああ･･･！)
Aは、麻薬のような堕落を先程より強く鶴見に感じた。
｢あ〜走ってる〜！｣
｢もう片方の私が描いたホクロにも走らせてやる〜！｣
(あ、ああ、それ以上は･･･！)
｢君は女性だから、頭にこうしてこうしてリボンをつけてあげよう〜！｣
(頭が煮えたぎっちゃう･･･！)
Aは経った数分で、すっかり鶴見に心酔してしまった。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
