兎の嫉妬 ページ35
｢ああ。もちろんだとも！｣
｢Aさんなら、そういってくれると思ったよ！僕たちと同じ気持ちになってくれて、本当に嬉しいな！｣
｢流石、私と同じく剣の心得のある者だな。｣
｢え？鯉登少尉は、剣がお得意なのですか？｣
｢ああ。私は自顕流を使う。｣
｢鯉登少尉は薩摩出身ですからね。｣
｢じ、自顕流･･･！す、凄い！｣
Aは、目をキラキラと輝かせながら鯉登少尉を見つめた。無理もない。自分と同じ、剣の使い手がいたのだから。
｢今度見せてやろうか？なんなら、手合わせでも･･･｣
｢是非お願いします！鯉登少尉ー！｣
｢Aさん。鯉登少尉は色々面倒くさいので、関わるのはほどほどにね？｣
そういって、宇佐美はAにじっと詰め寄った。その目は、少し狂気を帯びていた。
｢え、あ、あの、近い･･･｣
｢洋平。宇佐美上等兵が凄い嫉妬されてるぞ。｣
｢ふむ。その感じだとやはり、君たちは網走監獄で恋仲になったのか？｣
｢もちろんですとも！鶴見中尉殿！｣
｢は、はい･･･そのとおりです･･･！｣
Aは、酷く赤面しながらも鶴見の言葉を肯定した。
｢ふむふむ。要するに駆け落ちか！｣
｢ロマンチックー！｣
｢それは、川田が再び鶴見中尉殿にお会いするためでもあった！なぁ、そうだろう、月島？｣
｢は、はい･･･｣
(いくら、宇佐美と駆け落ちしたとはいえ、こんなうららかな女性をこの頭の吹っ飛んだ集団に入れるのは、大変申し訳ない･･･常識人が欲しいとは常々思うが、色々と苦労するだろう･･･だ、大丈夫だろうか川田さん。とくに心の健康が心配だ。)
月島はAに会って早々、Aの心配ばかりをしていた。それは、第2の門倉といっても過言でなかった。
こうしてAのささやかな歓迎は、月島の心配を他所に、なんとか無事に終わったのだった。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
