兎のいいなり ページ34
｢だから、君の実力はすでに私は認めているのだ。｣
｢し、しかし、私は女性なので軍に入るのは･･･それに、敵対する網走監獄の人間だったのですし･･･｣
｢実は、我々は正式な軍の人間ではないのだよ。｣
そういって鶴見はAに、なぜ自分らが金塊を狙うのかを語りだした。それは、中央にクーデターを起こすためだった。そして、第7師団本部を乗っ取り、北海道に独自の軍事政権を樹立させるためだった。その動機は、第7師団が戦争で功績に見合わぬ冷遇を受けたからと鶴見は語った。
｢ロシアから賠償金もとれず、元屯田兵の手元に残ったものはやせた土地だけ･･･我々の戦争はまだ終わっていない。戦友は今でも満州の荒れた冷たい石の下だ。｣
｢そ、そうだったんですか･･･｣
そう、少し声を落としていう鶴見にAは、酷く同情し共感した。そんな冷遇を受ければ、それは反逆したくなるとAは感じた。
｢だから、我々に軍の規律なぞ無意味だ。実は、我々は今のところ、100人にも満たない小隊でね。人手不足なのだ。だから、女性だろうと君が来てくれて嬉しいよ。それに、網走監獄の看守を辞してまでこちらに来てくれた。これほど、覚悟して来た者を、逆になぜ拒否する？｣
｢鶴見中尉･･･！わ、私をあなた達と一緒に戦わせてください！この剣で、どこまで戦えるか分かりませんが･･･この第7師団のために戦いたいです！亡くなって報われない兵士たちのためにも･･･｣
最初は、宇佐美にいわれるがままに鶴見らのところに来たA。しかし、鶴見らの目的を知り、Aは確固たる信念を見出したのであった。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
