兎の告白 ページ27
｢Aさん･･･僕と一緒に行きませんか？｣
｢き、急になにいって･･･｣
｢もちろん、僕の所属する第7師団ですよ。昨日いってましたよね？『剣を実際に扱う職に尽きたい』って。｣
｢あ、そ、それは･･･｣
Aは門倉に対する様々なショックで、心は既にボロボロだった。そこに宇佐美の甘い誘いが唐突に降り、Aは藁にもすがる思いになる。だが、なんとか振り払おうとする。曲がりなりにもこの網走監獄の看守を勤めたのだ。裏切るような真似は･･･と。
｢ここで、一生夢を追わずに閉じこもっているんですか？｣
｢な、なにいって･･･｣
｢門倉部長のことはよく分かったでしょ？ただの嘘つきとね。それを分かった上で、ここで家族ごっこを続けるんですか？｣
｢あ、ああ･･･｣
｢A･･･｣
そういって宇佐美は、また、Aにゆっくり近づく。しかし、Aは金縛りにあったようにそこから動くことが出来なかった。しかし、Aの予想に反して宇佐美は、横を通り過ぎ外に出た。そして、Aの方を振り向く。
｢僕はAさんのことが好きです。｣
｢な、なにを急に･･･｣
Aは、全くこの場所にそぐわない告白に戸惑う。
｢一目惚れでした。Aさんは、僕のことどう思いますか？｣
｢そ、それは･･･｣
Aは宇佐美が好きかもしれなかった。しかし、このような恐怖を味あわされては、その気持ちが本当かどうかA自身混乱して分からなくなっていた。それでもAは、宇佐美を思うと胸が締め付けられるような思いになるのだった。
｢わ、分からない･･･こんなことされて･･･でも、胸が痛いの･･･宇佐美さんのことを考えるとギュッて胸が痛むの･･･離れたくない、一緒にいたい･･･でも、あなたは私の敵で･･･あ、あれ、なんで、わたしこんなこと･･･！｣
Aは、無意識にいおうと思っていなかった言葉まで出てきて酷く混乱した。その様に宇佐美は歪んだ笑みを浮かべる。もう、Aは自分に囚われている、もう、自分から逃げられない、と確信して。
｢Aさんは僕のことが好きなんですね！｣
｢･･･いや、そうじゃ･･･そうじゃなッ･･････うぅ･･･｣
Aは、必死に否定しようとするが、その言葉がついに出ることはなかった。自然とAの目には涙が浮かぶ。
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作者名：もふもふ | 作成日時：2018年12月4日 12時
