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また再び最寄り駅に戻ってきた。帰宅ラッシュの時間だからか多くのスーツを着た人とすれ違う。こんなに充実した日は無かったと思えるほど、忘れられない日になったけど、また明日からは当たり前の日常に戻っていくんだと思うと切なく感じた。
「あ、俺は地下鉄で帰るんだ。ここでお別れだね」
韓国内でもセレブに匹敵するような人がタクシーじゃなくて、わざわざ電車に乗って帰るってことが信じられなかった。いくら韓国アイドルだとしても、日本デビューしていて日本のメディアに露出してるというのに、待ち合わせ場所までも颯爽と改札から現れてたし、この人の感覚はどうなってるのか不安になった。
「じゃあ俺は韓国で待ってるから。いつか会いにきてくれる?」
チアキくんは表情一つで人の心を動かす天才だと思う。
こんなことを言われちゃったら、すぐにでも会いに行きたくなってしまう。でも今すぐには出来ないのは分かってる。ちゃんとチアキくんと同じぐらいの人間になってからじゃないとダメなんだ。
「俺、絶対会いに行きます!」
チアキくんが手を差し出してきたから、握手かなと思って手を差し出すとグイッと思いっきり腕を引かれて、気付けば彼の腕の中に嵌ってた。
何が起きているのか理解するのに時間がかかって固まっていると、くすくすと笑い声が聞こえた。
「ジウンってほんと可愛いなぁ…。つい抱き締めたくなっちゃうよ」
頭をぽんぽんと叩かれてチアキくんは身体を離した。こんな人混みの中で抱き締められたなんて。本当にこの人の感覚はどうなってるのか。というか、周りの人達にはどう見えていたんだろう。
「じゃあ、またね。俺の王子様」
出会ったあの日のように、俺の手の甲にキスをして。
俺の芸名がキングだからなのか、それとも違う理由か。チアキくんはそう言って背を向けて人混みに紛れて消えて行ってしまった。
「王子様はチアキくんの方じゃんか…」
誰も聞こえないぐらいの声でつい呟いてしまった。
絵本の世界に生きる王子様でしかあんなキザなことは許されないはず。現実世界で手の甲にキスをして俺をドキドキさせている彼こそ、本物の王子様だろう。
手の甲に当たった唇の感触は当分忘れることができそうになかった。
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23.09.23
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hjr.(プロフ) - 藤さん» 藤様。初めまして、ヒジリです。有難いお言葉を頂き光栄です。まずは更新停滞させないよう頑張ります。笑 ありがとうございます:)♥ (5月23日 7時) (レス) id: 340019a8ab (このIDを非表示/違反報告)
藤(プロフ) - はじめまして、いつも更新を楽しみにしています!以前から別作品をずっと読んでいるのですがまさかhir.様のボイプラ作品が読める日が来るとは思いませんでした🥲!これからの更新楽しみにしています💕 (5月22日 23時) (レス) id: 239e12852c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hjr. | 作成日時:2023年5月17日 22時