15 ページ15
気が付いた時には俺は彼の背中に腕を回していた。大丈夫だよ、という言葉と一緒に。
軽く背中をさすってあげると更に力をこめてられてしまった。これは当分離してくれなさそうだと察した。
当然嫌じゃなかったし、むしろ嬉しかった。
彼はいつも画面越しで見ていた憧れのアイドル。俺も含めて色々なアイドルが彼の背中を追いかけているはずだ。その背中を俺が撫でているなんて、俺の頭の中では理解できそうになかった。本当に訳がわからなかった。
あんなにカッコよくて逞しく見えていたはずのチアキくんの背中って、こんなに小さかったんだろうか。それともあの一件から?
その答えを知っているのは、チアキくんと長い月日を一緒に歩んできたグループメンバーだけ。ずっとそばに居たからこそ見えるものがあるだろう。
素直に羨ましいと思ったし、俺ももっと彼のことを知りたいと思った。
「チアキくん、泣いてもいいんだよ」
返事はなかった。それもそのはず。もう泣いてたから。
声に出してはなかったけど身体が微かに震えていて、鼻を啜る音がした。
特に声をかけるもなく、ぽんぽんと背中を叩いたり、撫でたり、そんなことをしばらく続けているとチアキくんは落ち着きを取り戻したらしく俺から身体を離した。
顔を伏せて俯いていたけど、目の周りは少し赤くなっていた。
こんなに弱々しい彼を見てしまったら自分自身をコントロールすることができなくなってしまって、無意識のうちに綺麗な茶色の瞳から溢れ出ていく涙を指先で掬い取っていた。
俺は何でこんなことをしているんだろう。
全く分からなかった。
驚いたように俺を見つめる茶色い瞳。涙が溢れているせいか、すごくうるうるしていて、何だか変な気分になってしまいそうだった。
だって、チアキくんの泣いてる顔があまりにも可愛かったから。
いつも気丈に振る舞っていた彼が泣いてしまったなんて、相当精神的に追い込まれていたのは誰の目から見ても明らかだった。そんな彼に対して俺は邪な心を抱いていたんだから、不謹慎だと指摘されて当然だと思ってる。
でも、可愛いものは可愛いんだからしょうがないだろ?
→
23.06.02
264人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
hjr.(プロフ) - 藤さん» 藤様。初めまして、ヒジリです。有難いお言葉を頂き光栄です。まずは更新停滞させないよう頑張ります。笑 ありがとうございます:)♥ (5月23日 7時) (レス) id: 340019a8ab (このIDを非表示/違反報告)
藤(プロフ) - はじめまして、いつも更新を楽しみにしています!以前から別作品をずっと読んでいるのですがまさかhir.様のボイプラ作品が読める日が来るとは思いませんでした🥲!これからの更新楽しみにしています💕 (5月22日 23時) (レス) id: 239e12852c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:hjr. | 作成日時:2023年5月17日 22時