Arco Iris Ⅴ (ページ10)

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一番の邪は人間ページ10

〈side A〉

アイビーは、邪気を払う力がある。花言葉も前向きなもの。
それと同時に、少しだけ怖い花言葉もある。

“死んでも離れない”

重い愛情で怖いけど、多分私には縁がないだろう。

それはそうとして…

今私は、駅のホームにいます。
私は、先程桜野さんから頂いたアイビーのネックレスにそっと触れます。

桜野さんは、アイビーには「邪気を払う」効果があると聞きました。
悪いもの…運気の低下を下げるとか、悪霊に呪われないように、とか…その様な所かもしれません。

拝啓、桜野秋一様

「君、すっごく可愛いね！」

「どこの高校通ってる？あ、もしかして大学生？」

「オシャレだな〜。やっぱ可愛い子には可愛い服だよなぁ～」

「今から俺らカラオケ行くんだけどさ、君も行かない？」

…このネックレス、死んでも離さない要素が強過ぎます。邪気ではなく彼らを追い払う力は宿っていないのでしょうか。

今までは変なオジ様から「子供がこんな夜中に出歩いちゃいけないよ」「送ってあげるから一緒に行こう？」とか、変な誘いはいくつかありました。

この手の声掛けは初めてで、どう対処すれば良いのか分かりません！しかも会話の内容的に、この方達は大学生…私と同い年か1つか2つ年下…！

「…私、用事がありますので」

「良いじゃん！ちょっとだけ付き合ってよ！」
「大丈夫大丈夫！変な事しないからさ～」
「絶対に楽しいよ！君も夢中になれるって！」

「きゃっ!?」

ぐいっ、と強めに腕を引っ張られる。
力の差では、どうあっても男性には敵わない。

どうしたら……！

「A！」

久しぶりに聞く男性の声。
少し前に会ったはずなのに、何だか昔の様に感じて…

「誰お前」
「俺ら今からこの子と遊ぶんですけど！」
「邪魔だからさっさと…」

「…京極さん！」

先輩の京極さんだった。

「A！誰や、コイツら」

「知らない…です」

「…おい、その手離せや」

京極さんがそう言うと、私の腕を掴んだ手が離れる。
そしてすぐに京極さんが私の肩に触れ、男達から遠ざけてくれた。

「京極さん…」

「大丈夫？」

「…はい」

「ん、良かった」

そう言って、京極さんは私の頭を撫でる。
次の瞬間、男達に向けてキッと睨みを利かせる。

「女の子1人に対して、強引に何してん。乱暴とか最低やぞ」

「「「「……」」」」

京極さんの問いには一切答えない方達。
さっきまでの強気な姿勢はどこへやら…だ。