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〈side 桜野秋一〉
元気を取り戻してくれたのか、笑みを浮かべてくれた。
…少しだけ顔を引き攣らせていたのが妙に謎だけど、あんま考えない方が良いかもしれない。
そんな訳で、天野さんは俺にお辞儀をして、その足で神保町のマンゲキメンバーの所に向かった。
アイビーの花言葉は「永遠の愛」や「友情」「不滅」と言ったものがある。
友情は…満優と蜜柑ちゃん、それに楓に月斗君と出会った様に…これからも彼女に大勢の仲間が出来れば良いな、という俺の想いがある。
永遠の愛に関しては…恋愛面に関しては本人の自由だし、俺が何をどうこうするという訳ではないけど……こればかりは、俺からは特に深い意味はない。
そして不滅は……こんな形で破滅して欲しくない、という願いを込めて。
「ネガティブにはポジティブをぶつけろ…ってね」
「―――プラマイゼロ、これで一応はリセット出来たみたいですね。あの子」
客間の襖が開かれ、そこから出て来たのは……
「……隠れる必要あった？」
「ありますよ。天野さんって子は秋一君に話があったんですから。それに…主に男芸人から酷い仕打ち受けとる子に、これまで関わりのない男芸人おったら、天野さん余計に怯えて話せんくなってまうかも知らんし」
天野さんは男性恐怖症…という訳ではなさそうだけど、確かにテレビでしか見た事のない男性の先輩芸人……俺はまだ満優の身内だから怖がられずに済んだけど、他はどうだろう。
仁は俺よりも前に病院で天野さんに会ってるけど、その時は確か9番街レトロの京極君が一緒だったから話す事が出来た…というのもあるかもしれないし。
「それはそうかも…ごめんね。だけど隠れるなら、俺の部屋でも良かったのに」
「近くで会話を聞きたかったんですよ。あの天野Aって子の人柄を知りたくて」
「なるほど」
所謂…盗み聞きか。俺とゆずる君にしか同意がないけど。
「…で、ゆずる君の目から見て…彼女、どうだった？」
「…友人である満優ちゃんの兄とはいえ男の部屋に突撃して……なんとも危なっかしい子ですけど、俺はええ子や思いますよ。真っ直ぐで素直な所はとても好感持てます」
「ゆずる君、兄じゃないから。俺、満優の叔父だから」
「僕を含む殆どの関係者は、貴方達を兄妹として見てます。残念ながら」
俺と満優…顔の造形、本当に似てるからな…
「ところで古城は？」
「数時間前に一足早く向かったよ」
「アイツは…また俺から逃げよって…！」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
