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「あのねぇ、天野さん……いくら俺が非力でも、男の部屋に女の子が無防備に入ってきちゃ危ないだろ」
「桜野さんは満優さんのお兄様ですから問題ありません！」
「兄……確かに満優からは兄さんって呼ばれてるけど、俺は満優の叔父だからね」
「だからこそです！」
「まぁ俺だから良いけど、仲の良い人の親族が、敵だってパターンも有り得るからね？」
………
「……それは、まぁ」
「天野さん？」
「あ、い、いえ、何でも！あ……確かに敵になるというケースもないとは言い切れませんけど……叔父と姪が同じマンションで暮らすというのは、余程互いを信頼してるという証拠ですよね？」
「それは……そうだね。もう流石に必要はなくなったけど、結構前まで、俺はあの子の保護者みたいなものだったからね」
「ならば尚更問題はありません！」
「……逆に俺が君の保護者になるべきかどうか考えてしまうよ」
途中まで桜野さんに訝し気な目で見られましたけど、バレてはない…ですよね？
うっかり私は…また暗い顔を見せてしまったのかもしれません。
……友達の親族どころか、実の家族全員が私の敵だなんて…言える訳がない。
いえ、家族だろうと“最初から敵と認識”していれば、ここまで深く悩まされる事はなかったでしょう。
私が一番辛かったのは、家族なのに“どんな時も味方になってくれなかった”という事です。
…抱き締めて欲しかったのに、頭を撫でて欲しかったのに、些細な内容でも楽しい話がしたかったのに。
どうあっても家族の一員になれなかった、この気持ち……いえ、分かって貰おうとか、それは構ってちゃんにも程があります。
今大事なのは、新しい家に馴染んで、そして芸人復帰の為に療養する事です。
「…けど有難うね。満優を信頼してくれて」
「えっ？」
「満優の友達が増えるのは、俺も嬉しいから」
「えっ!?そんな、まだ友達という段階では…知り合って間もないですし」
「そう？でも、満優の方は君をとても可愛がっていると思うけど。俺から見ても仲の良い姉妹に見えるよ」
「姉妹…ですか？確かに、友達でもありお姉さんって感じではありますね」
もしも私にあんなに綺麗なお姉さんがいたら…毎日が目の保養です。
私は私でちゃんとしなければ！ですけど。
「で、ご用件は何だっけ？まぁ内容は何でもOKだけど」
「あっ、そうでした…大人な桜野さんから見て、私のこの恰好は余所行きに相応しいですか!?」
「君も大人だよね」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
