・【2024年1月24日更新】 ページ49
「っ！」
「古城さん…」
俺の言葉に、狛犬の2人の視線がこっちに向く。
ついでに令和ロマンもや。
他人のおっかない目は、俺はもう慣れとる。
「容赦せんって…乃川さんに何する気なんです!?」
「何て…お前らに関係ある？」
「当たり前やないですか！乃川さんは僕達の同期で……」
「ほんなら、天野さんはお前らの何？ただの同期ちゃうよな？天野さんの味方なら、乃川さんがこうして天野さんを敵対しとるんは満優姉の証言から明確。なら、俺達が乃川雪希の味方になる理由はない」
ガタン、と俺は立ち上がる。
一応いつでも逃げれる準備だけは整った方がええ。
勿論満優姉を連れ出すんも忘れん。
狛犬の2人、少しだけ満優姉に対して警戒心を露わにしとるし。
個人的な一番の理由は、満優姉の顔色が少しだけ悪いから。
なんや、いつもに増して周りの感情や表情に過敏になっとるし。
そいでもう1つは……
こないな話聞いて、全員が冷静でいられる訳ないから。
天野さんのこないな現状に、乃川雪希が関わってるのはもう分かり切った事。
しかし…乃川雪希が積極的に天野さんを苦しめようと動いてた…なんて、今更そないな新しい情報、皆が受け入れる訳がない。
神保町よしもと漫才劇場のメンバーになって
天野さんや乃川雪希の情報を探る内に分かったんや。
天野さんと乃川雪希の再結成を望む声
天野さんの無実を信じて擁護する人達
乃川雪希をあないな野蛮連中から引き離そうとする人達
天野さんが、乃川雪希を心の底から嫌っとる風には見えん事
天野さんは……心身共にボロボロになってでも、乃川雪希からの言葉を待っているという事
乃川雪希を助けたい、自由にさせてあげたいと願う人達
ホンマは皆、天野さんらを、この現状を、神保町よしもと漫才劇場を救いたくて仕方ないんや。
でも……そんな人達の願いを…乃川雪希は裏切ってるという事実が生まれた以上、色々と話は大きく変わる。
しかも、や。
そないな真相が大きく覆る様な発言をしたんが他事務所の…悪く言えば余所者の芸人。
余所者からの告発で、信じて来たものが崩れるなんて…許し難いやろな。
とにかく、一刻も早く満優姉をここから連れ出さんと…
彼女は数日後に、大勢の観客動員数が容易に予測出来るライブがある。
吉本も俺の身内やけど…満優姉も、俺の身内やから。
「いくら同期でも、大事な子をホンマに守りたいなら切り捨てるんも―――」
「ストップ、古城」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
