・ ページ47
「いや…いらないしお礼なんか。少なくとも私は貴女の味方じゃない―――」
「……叱ってくれたから」
「はぁ？」
「……いつもはご機嫌伺いの言葉ばかりで辟易してたけど、満優さんは…叱ってくれた。見ず知らずにも近い自分に」
見ず知らず…確かにあまりこの子の事は生で見ないけど。
っていうかさりげなく私を下の名前で呼ぶなんて…
というよりも…
「へぇ…チヤホヤされてる自覚はあるんだ？ふぅん…」
「……正直、ご機嫌取りや媚売る声にしか聞こえない…から、いつも無視してる…です」
「だけど、私みたいに辛辣な言葉は無視しないのはどうなの？」
「本音だから」
「本音？」
「辛辣とか、そういうのどうこうよりも…満優さんの声には、何の偽りも感じられないから。そういうの、大事というか……あんまり、聞かない」
変な子だ。
「君の先輩後輩…いや、この場合はそうだな……君の同期の子達は？あの子達の中にも、君に本音で語りたいとか思ってそうだけど」
「……天野さんの味方だよ、皆」
「天野さんの味方だから、心を開かないの？彼らは…乃川雪希さんの事も味方だって思ってるんじゃないの？」
「そんな訳、ない…」
こればかりは…私は何も言えない事に気付いた。
だって、私も彼女達の同期を知らない。
というか、今の吉本の若手芸人の子達の事情をあまり知らないのだ。
強いて言えば櫛野君だけど…櫛野君はAちゃんに恋愛感情を抱いているし、間違いなく天秤にかけるには相応しい人物とは言えない。
「……そう。でも…」
「？」
「だったら尚更、天野さんは君にとって信用出来る人間なんじゃないの？ハキハキして本音でぶつかり合う…少なくとも、君をチヤホヤする人達とは真逆な子だと思う……」
「―――アイツだけは別だ！アイツだけは……！アイツだけは絶対に信用して堪るか！」
……
今、え？
「………あ…えと、大きな声出して、すみません」
「え、あぁ、うん。それは良い」
Aちゃんに対して、明確な感情を見せた。
明確な怒り、憎悪…
殺意は分からないけど…人を痛めつける時の…狂った目。
少しだけ、気持ち悪くなってしまった。
この子から感じられるのは
「あ、顔色が…その、この辺で美味しいコーヒーとか飲める店知ってますから…今はそれだけでもお礼の一部として」
「…うん……」
殺意…かどうかは分からない。
でもそれ程彼女は、Aちゃんを…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 28人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
