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ハッキリしない。
その癖元相方については誰に対しても黙秘権。
元相方のAちゃんがこの数年どんだけ辛い思いをして、それを比較的近くで見ていたこの子はなんなの。
…昔の私もそう。
NSC入りたての頃は、上手く自分を表現出来ない…吉本から戦力外通告されずに数年間過ごしたのは本当に奇跡だ。
しかも私の場合は女性にしては高身長で…自慢じゃないけど胸も大きいから、色んな意味で…特に悪意のある目で見られたものだ。
そんな自分を変えたくて、きっかけは逃さずに生かして
自分の特技や好きな事を生かして、伸ばして…
だから、この子を見ていると昔の自分を思い出すのだ。
「あのさ、アンタが天野さんに虐められてようがどうだって良いし、それが真実でも何とも思わない。
だけど、正直天野さんの方が社交的でハキハキして…誰よりも色んな壁にぶつかっていくチャレンジャーだと私は評価している。そりゃ虐める奴は悪だよ。口があるのに手出したらおしまいだから。
勿論…虐められる方が悪いなんていうのはあっちゃいけないからそれは言わないけど、どっちかと一緒にいたいって思えるのは、少なくとも私は天野さんだから」
「……」
「そういう訳だから。あんなのに絡まれて言われまくりサンドバッグ状態なのは同情するけど、そんなの今も天野さんは理不尽に喰らってるし。少しは天野さんの痛みを知れば？」
そう吐き捨て、私は彼女に背を向ける。
これは賭けだ。
これでこの子が南雲率いるお仲間共にチクって、私がやられようが受けて立つ。
本来なら私も黙っていれば良い。
私のこの行動は危険行為だから。
例えるなら万引き常習犯を追う正義感強過ぎる従業員。
例えるなら強盗犯に抵抗しまくる人質。
相手の素性も良く知らないまま、刃物を持っている可能性が極めて高い相手に、丸腰の無鉄砲で立ち向かうなんて…それは正義感だけが取り柄で無計画の…ただのアホだ。
残念ながら私は馬鹿でアホで、意外と沸点が低い。
こんなんで何が皆の姉貴分だ、と情けなくなる。
でも…折角出来た可愛い妹分が傷付けられてるのに、キーパーソンとも言えるこの子が何も動かないのは、正直内心怒りで満ち溢れていたのだ、私は。
…手首を掴まれる。
痛くはない。けど咄嗟の出来事に驚いてしまう。
「何？乃川さん」
「雪希」
「は？」
「雪希で良い、です」
「…で、その乃川雪希さんが私に何？」
「助けてくれたお礼…したいです」
「…は？」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
