Arco Iris Ⅴ (ページ45)

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あんな人間の相方を庇うつもりはない。
だからと言って喧嘩を止めないという訳にはいかないのだ。

Aちゃん関連で揉めて、尚且つこの青年がAちゃんの味方というのなら余計に。

ちなみに、同居人…という点に関して小声なのは、乃川雪希の耳に入らない様にする為だ。

正直、私もこんな良く分からない立場の彼女が敵か味方かどうかも分からないし。

「あの子の味方を自称するなら、そんな自分から醜態を晒す様な真似は止めなよ。あの子だって、そんな第3者から見てひたすら喚いている奴、味方だなんて思いたくないだろうね」

「……」

「それに…一方的にこの子を…乃川さんを責めるのもお門違いなんじゃない？」

「っ！貴女に何が…」

「―――コレが本当の戦ったり争ったりなアレだ。そうやって誰かが誰かを責めて傷付けたり、それぞれの正義を押し付け合ったりして、全然終わらないもん」

私がそう言うと…その青年は「…すみませんでした」と頭を下げ、その場から逃げる様に去る。

「……最近の年下の若い奴は、血の気が多いなぁ」

「…貴女も十分若者だと思いますが」

「もうすぐ30歳を迎える女にどうもです」

「…30歳に見えないし、そもそも30代も若いと思う…です」

別にやり取りなんかするつもりはなかった。
私が何気なく呟いた言葉に、あっちが思わず反応してしまったからだ。

…なんて、乃川雪希のせいにしてしまったが、これも全部私と月斗も嫌悪している南雲の相方だからだ、と八つ当たりを正当化してしまう。

「知り合い？」

「……あの子、1期後輩です」

「ふぅん…」

仲良い同士なら、先輩後輩でも荒い口調の言い争いは良いとして…どう見ても2人は仲良いとは言えない。むしろ敵同士って感じだ。

そもそも上下関係が厳しい吉本で、後輩が先輩にあんな態度…許される訳ない。
まぁ…吉本や松竹芸能とかが厳し過ぎるだけなのかもしれないし、普通なのかもしれないけど…

トップ・カラーに所属してから、勿論尊重すべきところは尊重して敬語使ったりなんなりしてるけど、比較的緩いと感じている。
実力主義なのか、個性重視なのか、個性強過ぎて色々と変な感じになっているのか…

まぁ、私が今所属している事務所の交友関係はさておき…

「嫌なら嫌って言った方が良いよ」

「え」

「後輩が先輩にあんな口調、如何なる理由があっても許されないと思う。仲良くないなら尚更」

「…まぁ…そうですね」

……ハッキリしないなぁ。