・※ ページ42
〈side 野宮満優〉
話は何時間も前に遡る。
「アンコール用に、ですよ！」
「後、これとこれとこれと…」
「ボカロも要望が出ています！」
「いや時間余裕でオーバーする。アンコール以前の問題。喉潰れます」
私の誕生日ライブ。
私の生を喜んでくれる皆の為に…それは分かる。
皆私の歌を聞きにもだし、私のパフォーマンスを見てくれる、応援しに…勇気を貰いに云々…
だけど…全ての要望を叶えるのは本当に無茶な話であり、私自身の限界を思い知らされる…
皆の為に出来る事は全て叶えたいのに……
ライブを目前として、少しだけ憂鬱な気分になってしまった…そんな打ち合わせ。
明日は午後から現地でリハーサルだし…
帰宅しても、蜜柑ちゃんとAちゃんは神保町の皆と食事会だし…
一応荒川ちゃんからも「満優姉も飛び入り参加しましょうよ！」とお誘いは来たけど…断ってしまった。
流石に会議がどれだけ長引くか予想出来なかったし、こういう時の私はちょっと体調を崩しやすい。現に今も少しだけ頭痛起きてるし。薬…早く効いてくれないかなぁ…
「―――あれぇ？もしかして貴女って、フルムーンの野宮さんじゃないですか？」
ドラマや漫画ならこういう時、何か良い事が起きる前触れなのに。
いや、現実世界では「何も起こらない」のも正解の1つ。
何故良くない気分の所に、良くない人物達が私の前に現れるのだろうか。
「…お久しぶりです」
風花オポジット
私が可愛い妹認定している天野Aちゃんの…天敵元凶コンビ。
というか実を言うと、私もこのコンビ…主に南雲が死ぬ程無理。
去年だったか…
M-1準々決勝敗退した私達を見てケラケラ笑って…それはまぁ別に良いけど…
問題なのは、私達が売りにしているキャラや持ちネタ等を盛大に馬鹿にした…という点だ。
「どうですかぁ？あれからあのクソ生意気な社会不適合者の相方君と仲良くやれてますかぁ？というか去年俺が教えたアドバイスは参考になりましたかぁ？」
―――貴方達、解散したらどうですか？ピンでやってるから、心が離れていくんですよ。それに比べて俺は雪希と四六時中一緒にいても苦じゃない程、コンビ仲はとても良いんですよ？
「アドバイス…ね」
ピンでの活躍が顕著になってるフルムーンだけど、コンビである以上は漫才もコントも歌ネタも手を抜きたくない。
それは…私は月斗とお笑いをやるのが好きだし、月斗も私の気持ちに応えてくれるのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 28人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
