Arco Iris Ⅴ (ページ36)

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虚しい、な…
天野さんへの気持ちは、すぐに消えへん。
否、この先消えるかどうかも分からん。

この子と俺は、結ばれん。
そん事実を受け入れられへん俺が、ホンマに情けない。

「……天野さん、怖かったよな。もう大丈夫…いや、俺は何もしてへんけど…」

「ううん。櫛野君、有難う。本当に…貴方には助けられてばかりで…私は、守られてばかり」

「そりゃ…守りたいよ。俺は…」

天野さんが好きやから。
…好きってだけで、こんなにも君の為にと称して何でもしてあげたくなる。

けれど、それに見返りは求めてはいけない。

…必ずしも天野さんが俺に振り向いてくれる訳ではないから。

「……天野さん」

「櫛野君？」

「……本当、今までごめんな。何も出来んくて…」

俺では君を守れない。
せやから俺は君を好きになる資格はない。

そう思い込まんと、俺は…

「櫛野君も、結構アホだね」

……

「あっ…!?」

「私に散々面倒だのアホだの辛気臭いだの言っておきながら、何でそんな暗い顔するの？」

「な、何でそんな突然攻撃を…!?」

「そう言って、櫛野君は私を今まで励ましてくれたでしょ」

「それは…そうやけど」

「…本当に、どう…櫛野君を励ましたら良いのか、分からないや」

…何を言うてるんやろ…天野さん。

「……これまで私を意地でも前に進めてくれた櫛野君に、何もしてあげられくてごめん。私、本当に自分の事ばっかで…あれだけ貴方に守られて…その為に、怖い思いだってさせた。私の過去を…私の家柄の事も…」

天野さん…
色んな人達を苦しめて来た天野財閥の令嬢で
天野さんも、身内から酷い事をされて、自由を奪われて

完全に逃げ切っていない状況、多方面からの理不尽で容赦ない暴行に…苦しめられて…

「だから……本当にごめんなさい！そんな櫛野君の気持ちに、全然答えられなくて…私が、私の問題を全然片付けられなくて……本当に、どうしたら良いか分からなくて……」

「うん……」

「分からない以上は、櫛野君の告白にはどうあっても答えられない。今、私の頭の中…凄く面倒でゴチャゴチャで…それを何とかしたい。

でも…櫛野君が嫌いとか、そんな訳なくて……むしろ……貴方のお陰で、私…元気も貰ったし…前向きになれる様に頑張れたのも……

…櫛野君の言葉に励まされて…これまで守ってくれて……沢山救われたのも、本当…だから…」

天野さんの涙も、言葉も

そこに、嘘偽りは感じられんかった。