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確かに俺は、落ちていく天野さんを見て…名前を叫ぶ様にして…
でも、それが何で俺のお陰になるんや？
「名前呼んだから、何だよ？結局落ちてる最中だからどうにも出来ないだろ」
「はい。だから私は咄嗟に構えたんですよ」
「構えた？」
「私、アクション映画好きなんですよね！ビルからビルへとジャンプしたり、綱渡りをしたり、ヌンチャク振り回したり、勿論階段から転げ落ちるシーンとか！後、布突き破って落下するシーンも！」
……ジャッキー・チェン？
「昔から疑問だったのです。あの人達、本当に実践してるのかなって。プロのスタントマンと言えど、それは無茶なんじゃないかなって。だから動画で見たりしたんです。階段から転げ落ちても怪我しないようにする方法を」
ホンマに実践出来るからプロのスタントマンなんやろ。
と言いかけたが、黙る事にした。
そう言えば、あの時の天野さん…少しだけ体の姿勢を変えてた様な…
けど…やっぱり既に無抵抗のまま落ちとる最中やから、結構なダメージは喰らったんやろな。
いやでも、アレを実践出来た天野さんも凄いわ。
確かに運動神経凄まじいけど。ジャンプ力とかエグイし、足は男の俺よりも速過ぎるし。
チラリ、と後ろを見る。
全員、顔を覆ったり口元をギュッと噤んだりと…とにかく各々爆笑を抑えとる。
実際俺も、無茶苦茶大笑いしたい。
「は、はぁ？そんな事でお前、助かっちゃった訳？たかがソイツがお前の名前を呼んだくらいで…」
「ええ、助かっちゃったんです。私の大怪我を…死を望んでいない人がまだいるんだって、再確認出来ましたから。そしたら、どんなに私がみっともなくてもガキ臭くても、どんなに苦しい思いをしても、絶対に生きなきゃいけないでしょう？」
キッ、と天野さんはソイツを睨み付ける。
「私はキレやすいです。子供っぽいとか短気とか言われても、それは私の悪い所です。だけど…櫛野君や皆を馬鹿に…ううん、侮辱する発言をされたら、そんなの私は黙ってられない。黙る訳がない。
……この人達は、貴方に馬鹿にされて良い様な方々じゃない！私の味方でいてくれて信じてくれる、こんな優しい人達を傷付ける発言…私は貴方を絶対に許さない！」
その瞳は、紛れもなく嘘も偽りもない…真っ直ぐなもの。
立ち直ろうと、再び歩こうと奮闘する天野さんの…心の叫び。
「天野さん…」
「という訳で、私達の邪魔をしないで下さい。もう関わりたくないので」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
