束縛※ ページ4
〈side ???〉
「―――全く、どういうつもり？お前自身に課せられた職務を放棄するだけでなく、アイツを捕えられなかっただなんて」
「も、申し訳ございません！篠様…！」
僕の駒は、利用出来る奴は利用出来る。
僕の言う事に従順で、僕が喜ぶ様な成果を得てくれる奴等には飴を与えてやる。
しかし、役立たずは本当に役立たずだ。
それでも仕事が出来て要領の良い奴は、社畜として稼がせればいい。
ここで言う役立たずは、あくまでも僕にとって本当の意味で喜ぶ成果が得られなかった奴等を意味する。
僕は、目の前で深く土下座する部下―――かつての同級生であり、僕の側近である駒を見下ろす。
コイツは、学生時代は役に立った。
……天野家の長男である僕の「道具」として生を受けた“妹”を、追い詰めるだけ追い詰めて、洗脳させる為に動いてくれたから。
卒業までに完全とまではいかなかったけど、学生故に…という面もあるから、大目に見てあげた。
しかし……
当時大学在学中のコイツは、妹の周辺を洗脳したり、嘘の噂を広めたりで、妹を追い詰める様に仕向けた。そうしてまだ経験の浅い芸人の妹を孤立させ、弱っている所を捕えて、僕の道具として従わせる……
何だかんだで自我が強いし、警戒心は強く、家族全員を敵視する妹だし……言う事を全く聞かない役に立たないソレだけど、一応は僕の実妹。
僕から、天野家から逃げるソレを、逃す訳にはいかない。
だから、あの側近である駒に僅かながらも期待はしてたのに…
……駒は、少しやり過ぎた。
ソレを取り巻く環境を悪化させ過ぎて、道具として成り立たないぐらいの状況にまで陥った。
そんなボロ切れで廃棄寸前の人形なんか、本当の意味で役に立つ訳ないじゃないか。
そればかりか、実妹を守る先輩芸人とやらも現れ、最近では知らない内にあのアパートからいなくなったと報告を受けた。
散々あのアパートから実妹を精神的に追い詰めていたのに。
日常生活でも、芸人生活でも、じわじわと浸食させて…
目の前の側近“だった”駒は、本当の意味で使えない…むしろ動かれたら厄介な存在に成り果てたのである。
「はぁ…やり過ぎ。周りの人間を上手く操れない奴に、そもそも天野家が経営する会社を任せられると思ってるの？」
「も、申し訳ございません！篠様のお役に立てられればという一方的な想いで！」
「―――つまり、僕に対する想いが、僕の存在自体が仇となったんだろ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 28人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
