・ ページ30
急いで俺は天野さんの傍に駆け寄る。
先輩芸人は南雲の取り巻きである以上、天野さんに何するか分からん。
「櫛野君？」
「天野さん、もうええって、こんな人無視しよ！」
「だけど…」
「あぁ、櫛野か。お前、気を付けた方が良いぞ。コイツ、お前を欺こうとした悪魔だし」
「は？」
欺こうとした…？天野さんが俺を…？
「この女がジンゲキ…というか芸能活動休養になったきっかけ、階段から突き飛ばされて、殺されかけたからだろ？アレ、わざと何だろ？なぁ？天野、わざとだよな？」
「はぁっ!?」
「何言うてん！」
ソイツの意味不明な発言に、全員が怒りの声を上げる。
「……わざと、だって？お前、よくもあの日の出来事を「わざと」って言えたな」
「Aちゃんが思い出したくないあの日を平然と口に出来るって…どういう神経してんだよ」
くるまさんとケムリさんが特にキレている。
令和ロマンさんは天野さんが無事だと知った後、本当に安心して泣いていたのだから。
にも関わらず、ソイツは天野さんをこうして侮辱して…完全に一触即発状態や。
「階段から突き飛ばされて、普通は無事じゃ済まないんだよ。軽い怪我とか打撲じゃ済まないんだよ常識的に考えて。なのにこの女は今も生きている。天野は、わざと階段から落ちて櫛野の同情を引こうとしたんだ」
ソイツはそれを知ってか…敢えて煽ってんのか知らんけど、口を噤まない。
…俺が反論するしかない。
あの日の出来事の第一発見者…というか事件に居合わせたのは、俺なんやから。
「無茶苦茶やな」
「あ？」
「天野さんが階段からわざと落ちたとして、それこそ無事じゃ済まんやろ。天野さんが今こうして奇跡的に立っとる理由にはならん。同情引く為やからって、あそこまでする訳ない」
「クッションとか仕込んでたんだろどうせ。それか…櫛野が上って来るのが見えて、その時にわざと落ちたんだ。櫛野が身体張って自分を庇ってくれるかもしれないというお姫様思考でな」
「流石にこじつけでも有り得んから。仕込んでもないし。それに、俺は天野さんが階段から落ちるの目撃したけど、天野さんは俺を一切認識してなかったで。一瞬意識戻って目開けて、そん時に俺を始めて認識した」
「意識ぼんやりしてた割には、櫛野って認識出来たの何でだ？」
「俺と天野さんは同期やし、NSCでも毎日顔合わせてたからや」
「はっ！それこそ無茶苦茶な理由だろ？」
「お前よりは信憑性あるわ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 28人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
