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「俺も泣きそうにはなったけど、後ろの3人が静かに堪えて泣いてたから、逆に冷静になれたわ」
「ぜ、全然聞こえませんでした…」
「3人共、櫛野の必死な想いとAの告白の答えを聞いて、途中から2階に戻った」
「…京極さんは？」
俺がそういうと、京極さんのつり目が更に細くなる。
「お前、俺の存在に気付かんまま通り過ぎたやろ？しかもAを…女の子を1人残して」
「っ……」
「まぁ、A自身が1人になりたい言うてたから、仕方ないけど……その気になれば、いつでもAの心を掴む事だって出来る。それ程の自信はあるよ」
あぁ、そうだ。
この人も、天野さんを…
「俺は、Aを深く落ち込ませて、Aに「誰かを振る」なんて選択をさせたお前を許さへん」
京極さんの言葉はごもっともだ。
俺は…芸人としてもこの先の人付き合いに対しても、沢山迷っている子に対して…
この人の方が、彼女を深く想っている。
俺なんか、敵わない。
「俺が言えるんは、これ以上Aを悲しませんな。俺からはそれだけ。せやから……今後はお前の行動次第かな」
「………」
「それより、早うくるま達の所行くぞ。まだ飲み足りんて言うてたし」
「どうする？こことか」
「うーん…やっぱ無難に…」
「あ、ここ個室あるで」
「あ！本当ですね」
令和ロマンさん、古城さん、そして相方の坂口が店を探している。
俺は、俺自身の事しか考えてないというのに。
この人は……皆は……
「櫛野、そう身構えんな。お前と俺の不毛な喧嘩はこれで終いや。お前もお前で結構悩んでたんは分かっとるし。それにな、何も俺はAだけしか考えてへん訳ちゃう」
「えっ？」
「あんな、こんなモヤモヤは今日の内に晴らした方が―――」
その時やった。
「……アンタ、ええ加減にして！ええから私達の前から去ってよ！」
「今、気分良く楽しもうとしてた所だし！」
「邪魔するなら、とっとと同類の仲間達の所へお帰り下さい」
女子達の怒鳴り声に、俺達男芸人一同はそっちに向く。
何があったのか、俺は思わず天野さん達の所へ向かう。
そこにいたのは…
「だからさぁ、俺も混ぜろっつってんの」
「Aちゃんに散々酷い事したくせに!?」
「え？先輩のお説教くらい当然だろ？」
「えっ……!?」
風花オポジットの南雲さん…の、同期芸人。
そして、南雲さんと仲の良い先輩芸人だ。
何で、こんな人がここにいるんだ!?
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
