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昨日の一件で、私は自分が好きになりそうと思えたのだけれど
やはり過去のトラウマが消えていない上に、自分自身を好きになるなんて出来ない。
こんな役立たずで、道具として生まれて、好きな事すら出来なくて
周りからは「神童である天野篠と、その後に生まれた出来損ないのカス」と言われて
比べられて、その度に色んなものを壊されて
…居場所を作れなくて
挙句、昨日は嫌いな人の存在にずっと気付かないまま年月を過ごしていたという事実を知って…
「貴方に対してとても失礼なのは分かってる。本当なら…気付いた時点で、イエスかノーで答えなきゃいけないのに…」
「……」
「櫛野君の事は好きだよ。櫛野君の力強い言葉で、私は自分を好きになろうって努力しようって思えたし、最近では色々な事に楽しめる様になった」
「うん…」
「でもごめん。これ以上ウジウジ言うのは、私も嫌だから。告白の返事は…ノーで」
「……うん」
…環境のせいにしている様で申し訳ないけど、やっぱり好きって言われても分からない。
櫛野君の気持ちに応えたいし、自分を今よりも好きになりたい…貴方の為に頑張りたいって気持ちは凄く強い。
けど…それは櫛野君だけじゃない。皆の為に…期待に応えたい。
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京極さん、なかむらさん
古城さんや蜜柑さん、それに満優さん
荒川さん、はるさん
そして、箕輪君に古市君
櫛野君の相方である坂口君
信用出来なかった私にとって、私自身が好きだと自覚した人達は、他にも大勢いる。
「それに正直…櫛野君に対するそれが恋愛感情なのか、友達の言葉に元気付けられているのか…それは……本当に分からない」
そうだ。
イエスとかノーとかじゃなくて
分からないのだ。
政略結婚させられそうになって、それが愛の形と教え込まれた時期もあって…
恋愛の意味が分からなくなった…いや、分かりたくなかったのだ。
「そっか、うん。分かった」
あ…
「急かしてホンマにゴメンな。そんで、急に告白してもうて…でも、真剣に答えてくれてありがとう」
なんて、悲しそうな顔。
いっそ泣いてしまった方が良い、その表情。
だけど、そうさせたのは紛れもなく私で
私には、彼を励ます資格も
彼を笑顔にする力も、ない。
……ただ、傷付けた。それだけだ。
「そろそろ…戻らんとな。天野さんも…」
「あ…私、もうちょっとここで休んでる。ちょっと疲れちゃったから」
「…分かった」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
