居心地 ページ21
〈side A〉
美味しい料理
大好物のフルーツサンドを沢山食べ
大好きな人達、もっと話したいと思った人達
皆、これからも一緒にいたいと思えた人達
本当に…幸せな時間を過ごせた。
本当に私は休養中なのだろうか…とさえ疑問に思う程。
普通なら、こんな空間でさえも息苦しく感じるのに、どうしてたのだろう…
もう、復帰しても良いのではないか…
……
妙な事を考えたら、何故か急に苦しくなってきた。
少しだけその場から離れ、お手洗いに向かう。
このカフェは3階建てで、1階でお会計場所と調理場と休憩室、そして喫煙所がある。
2階がホール、3階が倉庫となっている…と、荒川さんと仲の良い店員さんが教えてくれた。
お手洗いは各階にあるけど、少しだけ静かな場所で考えたくて1階の方を使わせてもらった。
気持ち悪い、とかではない。
ただ、また何というか……
私は、本当にここにいて良いのだろうか。
そう思えてしまったのだ。
私は…ちゃんと皆の…
少し落ち着きを取り戻したのを確認した私は、お手洗いから出て2階へ行こうとして……
……あれ？
「……あ」
「！…あ…天野さん」
「櫛野君…いないと思ったら」
喫煙所から男性が出て来た。
櫛野君だ。
「喫煙スペースあると便利ですね」
「助かるけど…吸うの我慢してたけど、吸ってもうた」
櫛野君、そう言えば挨拶を軽くしたぐらいだ。
昨日はガッツリ付き合って下さった…し、助けてくれたから…
今日は櫛野君とあんまり喋れなくて…少し寂しいと思えたかも。
「…煙草の臭いする？嫌か？」
「え？…いや、全然。むしろそんな臭わない…よ？」
私がジロジロ見てしまい、少し気にしてしまったのかもしれない。
私が気になったのは、櫛野君…というよりも…
「美味しい？」
「へ？」
「それ」
私は煙草の方に目をやる。
「まぁ美味しいよ？脳内がスーッと心地良くなるんを、美味しいと感じる…って…」
「………」
「……もしかして吸いたいん？吸ってみる？」
「興味が無い訳じゃないけど…」
「一度吸ったら止められんし止まらんで」
「やっぱ良い。怖い。恐ろしい。怪しい。呪われたくない」
「そんな妖怪の類ちゃうねんから」
全くもう、と櫛野君は苦笑いを浮かべる。
私もつられて笑ってしまう。
それにしても、心地良い…か。
「天野さん」
「ん？」
「楽しかった？」
「うん、楽しい。凄く…本当に、心地良い」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
