まるで紅葉の如く ページ12
階段から転げ落ちた事で、彼は見事に(いつの間にか駆け付けた)警備員に捕まり
他の3人の仲間達もあたふたしてしまい、その隙に彼らも確保される。
私達は被害者なので、一応何が起きたのかを説明する事にはなったが、全面的に向こうが悪いのは目に見えて分かるのと、周りの人達が証拠を提供して下さったのもあり、すぐに解放された。
「はぁ…災難やったな、天野さん。京極さんも」
「あ…はは…すみません」
「古城、ありがとな。お前ホンマにええ奴」
「…俺がしたんはただの煽りですけどね。下手したら逆上されても可笑しないです」
「…でも、私達を助けて下さって、本当に有難うございます」
「ん…それは素直に受け取る。おおきに」
「ねぇ…！あれって…！」
ん？
「おお、9番街レトロの京極さんだ〜」
「ねぇっ！あれって天野Aちゃん!?生で見ると可愛い〜！」
「あっ…！古城楓君…！」
「……乗り換え、急ぎましょ」
「せやな」
「そうですね」
知名度が上がるのは本当に喜ばしい。
更に私達を見て笑顔になって下さるのなら、それはこの上ない幸福。
しかし……
「流石にもう騒ぎになりそうな事態にはなりたないわな」
「ま、そこまでキャーキャー言われる程人気はないですけど、それが一番好都合とちゃいます？」
「そ、それはそれで悲しい気もしますが…」
その時だった。
駅のホームにいる私達は、当然ながら目的地に向かう為に電車を待っている。
反対側から、特急列車が大きな音を立てて…勢い良く加速したソレは、大きな風を作る。
「――――……！」
古城さんの前髪が、フワリと舞う。
「………」
古城さんは突然の出来事に急いで目を瞑るも……
私は、見てしまった。
特急列車は過ぎ去る。
駅のホームは、人の足音や会話しか聞こえない。
「うぉぉ……今の速かったなぁ……A？古城もどないしたん？」
「………」
「……天野さん、見た？」
「！あ…」
「見たんやね」
「……すみません」
「謝らんでええ。俺も…駅乗るん久々で、サングラス忘れたし…まぁ、天野さんにならそろそろええかなって思ってたとこやし」
「………まるで」
「？」
「本当に、名前の通り“楓”ですね。それに、とても綺麗な」
本当に
顔も、2つの瞳も
思わず息を呑む程の
「気味、悪ないの？」
「え？」
「………何でもない。天野さんがそう思ってくれるんは、純粋に嬉しい」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年11月4日 2時
