人形 ページ7
凛とした男の声。
この先輩は、口を開いただけで空気を変えてしまうのだ。
今回は…良い意味で、なのかもしれない。
「古城さん…」
「あぁ、古城さん…貴方ってアレと仲良いですよね。流石芸人の癌同士！大阪時代、散々他の芸人達と揉めては問題起こして、騒動は数知れず…
悪玉菌でしかない貴方達が東京進出なんて、ちゃんちゃら可笑しくてヘソで茶が湧きますな〜？」
「！」
「お前…」
好き放題言いやがって…
ここにいる殆どの人達は、確かに当初はオレンジ日和さんを誤解していた面もある。
だけど話してみれば、優しくて裏表がなくて…暗い気分も、この人達と話せば気分が晴れるのだ。
それに大阪時代に先輩方と問題を起こした件も、蓋を開ければ先輩方の方に問題があったり、仮に問題があってもそれを関係のない第3者がオレンジ日和さんに非がある様な言い方で広めてた…というのも判明している。
彼らと同期のエルフさん、それにしゅんさんが特にそう断言しているのもあるし…それがなくても、オレンジ日和さんは俺達にとってはとても大切な先輩や！
しかし当の古城さんは…相変わらず前髪が長くて表情分からんけど、何となく涼しい顔をしているのは分かる。
というか…南雲を無視している？
「アンタ人形なん？可愛えだけで何の意思もあらへんし。正直自己主張強い市松人形よりも、ダンマリなアンタの方がおっかないて思う程や」
これは…古城さんが言葉を向けている相手は…
「……」
乃川さんに!?
「雪希に話しかけんなこの屑野郎！気持ち悪いんだよ！雪希が怖がってるだろうが！」
コイツ…古城さんが乃川さんに話しかけた途端、顔を真っ赤にさせたぞ。情緒どうなってんねん…
しかし古城さんは一向に南雲を見ようともしない。
「例えるならアンタ…マトリョーシカっぽいな」
「何です、その例え」
「剥いでも剥いでも本性が見えんて意味。
これは…猫の皮1枚だけやないね。土や氷の壁で何重にも覆って…ホンマの心はかなり縮小化して隠してはる。
最終的に黙ってばかりで、言いなりになっとるやん。元相方の子が嫌いとか殴りたいとか憎いとか…全く何も言わへんし、傍から見れば…アンタ何がしたいん？」
「……」
「ほら、都合悪なるとまた黙る。でも…アンタの崇拝者にとっては都合ええかもな。好きな様にアンタがどないな人間が想像出来るから。ある意味「姫」とか「アイドル」とか呼ばれてんの、あながち間違いないんと違う？」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
