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「コレで攻めてみーひん!?絶対可愛い！」
「新たな扉を開きましょう」
いや女子、どんな会話や。
しかし……俺…何しにこないな場所に来たんかな…
勿論、天野さんを助けるべく追いかけたんは間違いない。
間違いないけど……服選び自体は、女子だけの約束というか…俺無関係よな。
そうなると…
「俺、帰っても良かったんと違う…？」
俺がポツリと呟くと、森下さんは「はぁ？」と呆れた声を出す。
「何言ってんのさ。仕方ないでしょ。天野さんの命の恩人である以上は」
「…命の恩人って称えて下さる割には、えげつない場所にずっと拘束されてません？俺」
「それ以前に、天野さんとそのDQNイカレ野郎の問題に自ら首を突っ込んだのは君だろ。天野さんから聞いたけど…DQNに追われてる彼女を、別方向から君が追いかけて、しかも腕を掴んで引き留めるなんて……」
「そ、そうでもせんと…天野さんどうなるか…」
「今ここで君が帰ったら、天野さんがどういう心境になるのか分からないの？」
「え…？」
「多分、不安どころか罪悪感に包まれるよ。あの子、何だか消極的で自分が嫌いなんだろ？」
―――櫛野君がこんな私を好きでも、私は私が大嫌いで仕方ないの…！
「あ……」
「君は命の恩人なんだよ。君は天野さんの命を…心を色んな意味で救ったの。あの場で逃げ出したり、何なら無視する事も出来たのに、君はそうしなかっただろ？
天野さんを身体張って助ける！っていう意思を貫いた以上は、最後まで天野さんを安心させてあげる事だけ考えなよ。
こんな場所に相応しくないとかの理由で帰るとかふざけたことぬかしたら、許さないからな」
ふざけた事言うてんのは、俺か…
確かに、今この場で天野さんから離れたら、きっと天野さんは罪悪感に苛まれる。
天野さんは、アホなくらい自分を好きになれん子。
天野さんは、自分なんか助けられる価値ないと思い込んどる子。
天野さんは…色々溜め込み過ぎて、悲痛な叫びを上げんといけない程、心が限界を迎えている子。
今、俺がここで「俺は部外者やから」と帰ったら…天野さんは「私のせいで櫛野君の大事な時間を奪った」とか面倒な事考えそうや。
けれどそれは言わんと、また明日からその空元気で作り笑みを浮かべて、嫌な気にさせんようにする。
…本当、面倒臭いなぁ！
そないな事せんでも、俺は天野さんを嫌いになんかならんし、何も考えんとただ傍におって他愛のない話で笑えたらそれでええのに！
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
