Arco Iris Ⅳ (ページ45)

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「GPSとかハッキングとか、無茶苦茶IT関連強そうなんに…」

櫛野君も思ったのでしょう。
頭は良いのに、色々と残念だと言う事を。

副社長の娘さんの世話係に任命されたぐらいだから、信頼度は厚い。
つまり…仕事は出来るのだろう。

なのに、天野篠の妹である私があまりにも憎過ぎてなのか…天野篠を神聖視する程崇拝しているのか…いずれにせよ、盲目になる時はとことん盲目になる。

今回だってそうだ。
私を見つけただけで、社会人なら優先しなければならない仕事を放置…部下にも報連相なしで独断行動をしたのだから。

でも…私自身が危うかったのは事実。
私1人じゃ、どうにもならなかった。本当に…天野家に戻される所だった。

だけど……櫛野君に会えて、助けてくれたから…こんなにも落ち着く事が出来た。

それと同時に、兄の側近が何だか小さく見えて来た。

こんな…社会人として有り得ない行動をする人に、私は怯えていたんだ…

「……クソッ…こうなったら……！」

―――え？

私がぼんやりとしていると、兄の側近は、何かを握り締めて

それは、何か、光って

「あ……！あ、天野さん!!」

櫛野君の、悲痛な叫び

鈍い、音が…

ドサリ、と倒れる。

……？

「え……え？」

痛みは、ない。

「あ…天野さん？」

櫛野君にも、何の変化もない。

つまり、倒れたのは……

カシャンッ、と、綺麗なままのナイフが滑り落ちる。

「い……い……

―――いっでぇぇえええええええええっ!?!?」

「……え？」
「何コレ」

状況が追いつかない。

私はてっきり、あのナイフで私と櫛野君が刺される…そんな恐ろしい絵図を描いていた。

だけど、何故か兄の側近は背中を痛そうにして悶え苦しむ。

「―――…僕の大事な店の近くで、何をギャアギャア騒いでんだよ。汚らわしい野郎の声のせいで、可愛過ぎる僕の愛らしい耳が腐ったらどうしてくれるんだ」

「腐ってしまえ」
「櫛野君？」
「あっ…ううん、何でもない。ついうっかり」

櫛野君の気持ちは分かりますが、兎にも角にも…私達は助かりました。

その方は…

京極さんの様に、自身も周りも元気になれる自己愛表現でもなく
大先輩であるNONSTYLE井上さんの様な、演技とは思えない程のドン引くけど大笑いしてしまうナルシスト表現でもなく

ただただ本気で自分が一番可愛いと思い込んでいるのが丸分かりな、男声の美少女でした。