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奪われてしまった私のスマホ。
それを返すと言う張本人である兄の側近。
だけど…
「……貴方の事だから、それにGPS機能を…」
「あ？走りながらそんな器用な事出来ると思ってんの？俺がいくら篠様の側近だからって、買い被り過ぎじゃね？」
「違法行為に塗れた天野財閥だもの。ハッキングなんて容易い事なのは分かる」
見る見る内に、兄の側近の表情が曇る。
櫛野君が私を抱き締める。
「そんな違法行為に塗れた家に生まれた以上、お前も犯罪者の家系だ」
「……」
知ってる。
昔から天野家の黒い噂は流れに流れ…誹謗中傷は日常茶飯事だったから。
「大企業であればある程、黒いやり取りなんか目を瞑ってんだよ皆。
綺麗なものしか信じない、可哀想なお花畑ちゃんなお前でも分かるだろ？……手段は選ばねぇんだよ」
「やっとる事、ただのヤクザ…否、チンピラやないか」
「あ〜、影薄いから忘れてたわ。クシノクンだっけ？何の権力もねぇ一般庶民がほざいた所で、お前の今の行いが無駄なのには変わりねぇけどな」
「…犯罪者の血筋言うなら、俺自身も知らん内に何かやっとるかもしらんし、何なら近い先祖から遠い先祖までの誰かが、エグイ犯罪やってもうた可能性もある」
「だから？」
「…ご先祖様やご実家がやってもうた犯罪を、子孫に償わせる義理はない。それにお前らは率先して犯罪をやっとる。天野さんは些細な事でも申し訳ないと謝って、何とかして償おうと必死になる。
そんなお前らの道具とか玩具とか…ふざけんな！
天野さんは、そこで生まれただけの……普通に好きな人生を歩んでええ、ただの女の子や！」
「……櫛野君」
「…天野さん。ご実家にまた酷い事されて縛られても、その度に俺や…皆が天野さんを自由にさせるから。俺達が、天野さんを道具なんかにさせん。
坂口も、9番街さんや令和ロマンさん…エルフさんも…神保町の殆どが、君の味方や」
「…うん、有難う」
「ようやっと、笑ってくれたな」
ん？
「私…今まで無愛想…だった？」
「え!?あ…そういう意味ちゃうくて…あー……っと、それよりもコイツやコイツ！」
櫛野君は…ギッ、と兄の側近を睨み付ける。
「さっきから気になっとったけど…そもそもお前なぁ、その「しょうさま」って人の側近の癖に、仕事放置して何してん!?側近は名ばかりで実質無職なん!?天野さん追いかける暇あるなら、さっさと「しょうさま」ん所に戻れや！」
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
