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「い、今から、私の言う言葉…櫛野君を、こ、こまっ…困らせる、だけで…櫛野君が、嫌な思い、する……！」
「支離滅裂でも何でもええ。俺は、天野さんが好きやから」
「櫛野君がこんな私を好きでも、私は私が大嫌いで仕方ないの…！」
逃れられない。
「なんで…なんで、私は……！何もかも捨てないと、私は生きられない、あんな家で、これ以上生きたくない！だから…家を出て、夢だった芸人になったのに…！」
「……」
逃してくれない。
「芸人になってもあの家が私を逃がさないのなら、私には居場所どころか逃げ場なんかない……！私は、ただ……」
「……うん」
天野家に生まれた私が悪いのか。
「普通に、皆で面白い事や楽しい事して、お笑いをしたかっただけなのに……普通に笑ったり泣いたり、友達と遊んだり…話し合ったり……それで、良いのに……！」
「天野さん…」
私は、何の為に生まれたのか。
「天野財閥の令嬢に生まれて、良い事なんか1個もない……！何で、私を産んだの……！どうして、家族なのに愛してくれないの……！
お願いだから、私を……天野財閥の令嬢なんて肩書要らないから……ただの「天野A」として、私の人生を歩ませてよ……私の手に入れた居場所を…奪わないでよ……」
「天野さん…」
「―――逃げられる訳ねぇだろ。お前は天野財閥の道具なんだから」
あぁ、やっぱり
「なっ…!?」
逃げられない。
私は、高校入学してから1年間は、学校のどこに隠れても、アイツに見つかって
……兄が、私の制服のリボンにGPSを取り付けていたと知ったのは、私が卒業する直前だった。
「どうして、ここが…」
けど、今回は…どうして、私の居場所を…
「……まさか」
最初から仕組まれていたのだとしたら
「あのぁ…Milky Wayの最初のファンになったあの少女。誰だったか分かる？」
「あのパンダのマスコット…まさか…GPSを…」
「！GPS…って」
「一応安心要素として、伝えるけど……ファンなのは本当、気に喰わねぇけど。でもよ…その少女、実は天野財閥の副社長の娘なんだ」
「……」
「その時点でお前は天野家から逃れられない……
まさか、一番のファンであるあの少女を、お前は「ファンを辞めろ」だなんて言うつもり…じゃねぇよなぁ？」
「……私達を純粋な想いで…ファンに、なってくれたあの子が…」
私は……天野家から、逃れられない。
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
