篠突く雨の如く ページ36
〈side A〉
荒川さんからの衝撃の返信から数日後
とりあえず出掛けよう！という事になり、色々とやり取りをして…
私は明日開かれる食事会の主役(らしい)とのことで…可愛い服を着ておめかししよう！となり街中へ出掛ける事になりました。
服…普通に家にある物で良いか、と考えていたけれど…同居人である満優さん、蜜柑さん…そしてエルフの2人に「どうしても着せたい服がある」と、口でもLINEでも総攻撃の如く、私が何かを言う隙も与えられず…それにしても私、こんなに押し弱かったっけ…
ちなみに…蜜柑さんは再び大阪の方へ泊まり込みの為、はるさんは用事がある為、今日は一緒に遊べず…
満優さんと荒川さんは仕事後に待ち合わせ場所へ合流する予定です。
天野家を出る前までは、使用人や母親が私に服を与えてくれた。
突然パーティやお茶会に出席させられる時もあったから、基本ドレスや着物…洗練されたものだけど、着心地は正直最悪だった。
服どころかファッション誌も買わせて貰えなかったから、拒否してしまった日は……
「……寒くて痛くて恥ずかしい記憶を思い出してしまいました」
天野家を出てから、こっそり溜めたバイト代で衣類を購入出来たのは嬉しかった。
けど…私みたいなちんちくりんが本当に似合うのか心配になり、気付けばカジュアル系…の中でも無難な物を選んでばかりになって…
……雪希もカジュアル系を好んでいたけど、可愛いが本当に似合ってたな。
―――Aちゃん、何でそんな可愛気のないものばかりなの？リボンとかフリルとか、そういうの似合いそうなのに。
―――……いや…服買った事ないから、失敗が怖くて。お金もカツカツだし。それまでは無難な物着てじっくり考えようかと。
―――！へぇ…
―――え、何？
―――……てっきり「私には似合わない」とか「私はこれが好きだから」とか、イライラする答えが返って来るかと思ったから。
―――……私が、もしその“イライラする答え”だったらどうするの？
―――どうもしないよ。自分がイライラするだけ。まぁ、可愛い女子の大半は「私にはそんな可愛いの似合わないよ〜」とか言いつつ内心他人から「そんなことないよ。可愛いよ」って言われるのを待ってるものだし。
―――…それは偏見が過ぎない？
―――で「私はこれが好きだから」って答える自我が強い女性は、他人の意見を聞かない奴ばかりだし。
―――…昔そういう女子に何かされたのです？
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作者名：氷柱 | 作成日時：2023年9月12日 0時
